2008 Fiscal Year Annual Research Report
プロタミンノックアウトマウスを用いた精子の核凝縮とRNA制御機構の解明
Project/Area Number |
19591898
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
竹田 直樹 Kumamoto University, 生命資源研究・支援センター, 助教 (90304998)
|
Keywords | 精子 / ES細胞 / Protamine / 核凝縮 / haploinsufficiency |
Research Abstract |
ヒトの不妊においてはその原因の約半数が雄性に起因し、精細胞に特異的に発現する極めて特徴的なDNA結合タンパク質であるプロタミン類の発現低下が不妊に関係しているという知見が数多く報告されている事から、その1つであるProtamine1(Prm1)遺伝子を、ES細胞を用いた遺伝子相同組換え技術により破壊したノックアウトマウスを作製し解析をおこなった。 その結果、Prm1ノックアウトマウスは、染色体の一方を破壊したヘテロの状態で雄性不妊であり、ミトコンドリアの膜電位低下と鞭毛微小管構造の欠陥による精子運動能の喪失が主因で有る事を明らかにした。さらにPrm1変異マウスでは、破壊したPrm1のみならずPrm2の発現量をも低下しており、電子顕微鏡による観察では精子頭部の電子密度が減少していた。これらの結果から精子核凝縮の主要タンパク質であるPrm1、Prm2が減少した事により、核凝縮が不全になった事を明らかにしている。 コメットアッセイによりDNA損傷を測定した結果、変異マウスでは約7割の精子で損傷が増加している事が確認された。しかし、精子成熟過程における酸化ストレスを模倣した過酸化水素処理では損傷は有意には増加せず、また約3割の精子の損傷度は野生型を遜色がなかった。さらに精子を詳細に観察したところ、変異マウスでは約8割に精子頭部及び中片部における形態異常が見受けられた。しかしこれらの形態異常とミトコンドリアの膜電位の低下は必ずしも対応しなかった。これらの表現型の違いは、精子形成過程における細胞質架橋などの特性により、発現するPrm類の転写翻訳量に応じて生じるハプロ不全の為と思われる。 これらの結果から、Prm1の発現低下はPrm2の発現低下など、他の遺伝子の転写や翻訳に影響を与え、クロマチンの凝縮のみならず、運動能の喪失等を来す事により生殖不全となる事が明らかになった。
|