Research Abstract |
目的:子宮頸癌の抗がん剤感受性に関わる分子生物学的因子を探索し,分子標的治療やテーラーメイド医療に結びつくデータを得るために研究を行った。 方法:4種類の子宮頸癌細胞を用い,様々な濃度のパクリタキセル含有液で培養し,MTTアッセイによる感受性測定,フローサイトメトリーによる細胞増殖および細胞のサブG1集積解析,DNAの断片化観察によるアポトーシス解析,ウエスタンブロット法によりアポトーシス誘導経路および抑制経路に存在する各種蛋白の発現解析を行った。Invitroの実験で感受性株と抵抗性株で差の認められたpAktおよびpmTORの2つのアポトーシス抑制系蛋白の発現解析を,治療前の子宮頸癌生検組織を用いた免疫染色により解析し,臨床病理学的因子や予後との関連を解析した。 結果:パクリタキセルに対する感受性が最も高かったのはHeLa細胞で,最も低かったのはCaSki細胞であった。HeLa細胞およびCaSki細胞を5μMのパクリタキセル含有培養溶液中で培養すると,24時間で細胞周期G2/Mにおける分裂停止,48時間から72時間でサブG1集積が増加した。高感受性のHeLa細胞では,DNA断片化の増加がより早期に明瞭となった。抵抗性のCaSki細胞では,Aktの下流にあるmTORが活性化され,mTORの活性化を抑制するラバマイシンで前処置すると,パクリタキセルに対する感受性が有意に増幅された。臨床検体を用いた免疫染色による発現解析では,pAktおよびpmTORの治療前組織での高発現は,独立した予後不良因子であり,5年生存率で約40ポイントもの差が認められた。1結論:子宮頚癌細胞に対する抗腫瘍効果はアポトーシスを誘導することにより発揮され,mTORを標的とするラバマイシンはパクリタキセル抵抗性の子宮頚癌細胞をパクリタキセル感受性に変えることが明らかとなり,子宮頚癌の化学療法は,mTOR高発現群には無効あるいは有害であり,ラバマイシンとの併用により感受性が亢進することが期待される。
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