2008 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌標的分子HB-EGFの発現亢進に関わるシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
19591947
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
宮本 新吾 Fukuoka University, 医学部, 准教授 (40209945)
|
Keywords | 卵巣癌 / HB-EGF / 酸化LDL / CD36 / EMT / Snail / 腹膜播種 / CRM197 |
Research Abstract |
本研究は卵巣癌標的分子であるHB-EGFが発現亢進する分子機構の解明を目的とした。HB-EGFは炎症等による酸化ストレスにより産生された酸化LDLの刺激によってマクロファージから分泌され、アテローム形成を促し動脈硬化をきたす。そこで、卵巣癌患者腹水中の酸化LDLの発現量および卵巣癌患者組織中の酸化LDLの受容体であるCD36の発現量を解析したところ、正常卵巣症例と比較しいずれも発現亢進していた。さらに卵巣癌細胞株RMG1・SKOV3に酸化LDLを添加すると、HB-EGFの発現が亢進し、HB-EGFの受容体であるEGFR及びその下流のシグナルであるERKの活性化を認めた。またCD36の発現を抑制すると、酸化LDLによるHB-EGF発現亢進の効果は抑制された。一方、HB-EGFの発現亢進は卵巣癌において腹膜播種や薬剤耐性といった悪性形質の獲得に寄与しており、その悪性形質の獲得にはEpithelial-Mesenchymal Transition(EMT)に関わるsnail1の関与が示唆されている。そこで、RMG1細胞においてsnail1の発現を抑制するとHB-EGF発現量や細胞の接着能・浸潤能の低下を認め、HB-EGFを添加するとsnail1のmRNA発現量の増加やEMTのマーカーであるE-cadherinの発現低下も認めた。RMG1細胞とRMG1細胞のHB-EGFを発現抑制した細胞(R-181)をヌードマウスの腹腔内に播種させたモデルでは、RMG1細胞の腫瘍形成能はR-181細胞と比較し有意に高く、HB-EGF特異的抑制剤CRM197を腹腔内投与するとRMG1細胞の腫瘍形成能を著明に抑制した。以上の結果より、酸化LDL-CD36の経路及びsnail1を介したEMTはHB-EGFを発現亢進させ、CD36やsanil1は卵巣癌において新たな標的分子になり得ることが見出された。
|