2008 Fiscal Year Annual Research Report
有毛細胞の音受容に関与するアクチン関連蛋白と遺伝性難聴DFNA20/26の研究
Project/Area Number |
19591953
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
香取 幸夫 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 非常勤講師 (20261620)
|
Keywords | 神経科学 / 細胞組織 / 蛋白質 |
Research Abstract |
界面活性剤で脱膜化した内耳有毛細胞不動毛の微細構造を電界放射型走査電子顕微鏡により高倍率・高解像観察することにより、有毛細胞の機械電気変換機能との関与が示唆されている不動毛間架橋構造(tip-link)と細胞膜裏打ち構造との構造的関係を明らかにした。Tip-linkの両端、すなわち短い不動毛の頂上と隣の長い不動毛の側面には脱膜処理でも失われることのない径約50ナノメートルの円盤型構造があり、不動毛の細胞骨格であるアクチン細糸と連絡していた。頂上側の構造は、先駆研究によって明らかにされているキャッピング蛋白であることが類推され、また側面側の構造はアクチン細糸上を動くミオシン分子ないしはカドヘリンの係留蛋白を含むことが示唆された。これらの構造が今後免疫組織化学的に証明されるならば、今回の観察結果は有毛細胞レベルでの音受容機構の解明とアクチン分子に関係する遺伝性難聴の病因解明の足がかりになると期待される。 内耳有毛細胞の機械電気変換機能は細胞外カルシウム濃度に依存し、単離された有毛細胞はカルシウムフリー緩衝液中では機械電気変換機能を失うことが報告されているが、今回、固定前にカルシウム濃度を変えた状態の組織を観察し、tip-linkの長さが変化すること、ないし消失する所見を明らかにした。このことは内耳有毛細胞のtip-linkが内耳の音受容に重要な役割を果たしていることを示唆した。 研究成果は英国キール大学のFurness博士と共著で神経科学領域の国際誌Neuroscienceに発表した。
|