2009 Fiscal Year Annual Research Report
難聴モデル動物における、内耳の変化と聴覚中枢の発達について
Project/Area Number |
19591961
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊藤 真人 Kanazawa University, 医学系, 准教授 (50283106)
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Keywords | 先天聾モデル / 聴覚中枢 / 発達 / プログラム細胞死 / 脳の可塑性 |
Research Abstract |
21年度はまず、聴覚の開始(Hearing onset)前の新生児期蝸牛破壊による片側先天聾モデルラットを作成し,その聴覚中枢発生(神経核間の投射)の変化について検討したところ、蝸牛神経核-下丘への投射には変化がみられたが、DNLL-下丘の投射には明らかな変化はみられなかった。これは、中枢聴覚路は多重性の交叉性投射があるために、健聴側からの入力刺激によって、上位になるほど一側聾の影響が薄まるためであると考えられた。 次に新生児期(P12)蝸牛破壊による両側先天聾モデルラットを作成したところ、蝸牛神経核腹側核の縮小をみとめたものの、蝸牛神経核-下丘への投射に変化はみられなかった。ところが、DNLL-下丘の投射では交叉性投射ニューロン数が著明に増加している所見が得られた。これは実はニューロン数が増加したのではなく、聴覚入力がないことにより、正常発生過程で見られるニューロンの「プログラム細胞死の自殺スイッチ』が入らず、本来淘汰されるべき細胞が残存したのではないかと考えられた。 ところで過去の先天聾動物モデルは、上記の蝸牛破壊モデルを含めて、ヒトの先天性内耳性難聴の病態とは異なる重度障害モデルであり、人工内耳の適応とされるラセン神経節細胞が生存しているような非破壊的内耳性難聴のモデルではない。そこで、ヒトの先天聾により近いモデルを、蝸牛を破壊せずに内耳毒性を有するアミノグリコシド系抗菌薬であるアミカシンを、生後早期に全身投与することで作成することができた。このモデル動物は、ヒトの先天聾における聴覚中枢の生後の発生とその可塑性を知るための良いモデルとなる。
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Research Products
(13 results)