2008 Fiscal Year Annual Research Report
徐放化神経栄養因子を用いた顔面病的共同運動の治療法開発
Project/Area Number |
19591976
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
羽藤 直人 Ehime University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (60284410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 宏尚 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (90403807)
脇坂 浩之 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (30304611)
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Keywords | 病的共同運動 / 顔面神経麻痺 / 後遺症 / 徐放化神経栄養因子 / 圧迫 / 神経過誤支配 |
Research Abstract |
現在ベル麻痺やハント症候群などの末梢性顔面神経麻痺に対してステロイド、抗ウイルス剤を中心とした薬物治療や、顔面神経減荷手術など外科的治療が行われている。しかし、これらの治療法における神経再生促進効果は不明であり、完全変性した神経に対する有効な治療法は現在のところ確立されていない。一方、近年の組織工学に基づいた再生医療の進歩は目覚しく、手術治療への応用も多疾患で展開されている。顔面神経の外科的治療においても、再生医療を融合することで治療成績が向上することが期待される。本研究では神経再生促進を目的とした新しい治療として、神経栄養因子であるbFGF(basic fibroblast growth factor)を薬剤の徐放效果を持つ生体吸収性ゼラチンハイドロゲルと組み合わせ、動物の顔面神経完全変性モデルに投与し、神経の再生捉進効果について検討した。昨年度完成させた圧迫障害による顔面神経麻痺後に的共同運動を発症するモルモットに対し、bFGF含有ゼラチンハイドロゲルを投与したところ、神経再生促進効果が示された。bFGF含有ハイドロゲル投与による神経再生促進の機序については、bFGFの再生神経に対する発芽、伸長や髄鞘化促進といった直接効果や、bFGFのもつ血管新生促進作用により神経再生に必要な蛋白や細胞の供給が増え、結果神経の成長、成熟が促されたと推察される。bFGF水溶液の単回投与群では神経の再生促進効果は認められなかったが、bFGFは生体内での代謝が速いため、生理作用が十分に発現されなかった可能性がある。ドラッグデリバリーとして用いたゼラチンハイドロゲルは生体内で徐々に分解されるため、それに伴ってbFGFが徐放され、神経に対して再生効果があったものと考えられる。顔面神経高度麻痺例だけでなく病的共同運動に対しても有用傾向を示しており、bFGF含有ハイドロゲルを投与することは臨床応用も可能であり、新たな治療法となりうることが示唆された。
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