2007 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病網膜症および加齢黄斑変性症の遺伝子解析:PEDF遺伝子多型を中心として
Project/Area Number |
19592037
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
粟田 卓也 Saitama Medical University, 医学部, 教授 (40184303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 圭介 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (90251090)
飯塚 裕幸 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (20348246)
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Keywords | 糖尿病網膜症 / 加齢黄斑変性症 / 遺伝因子 / 色素上皮由来因子(PEDF) |
Research Abstract |
疾患感受性遺伝子を同定することは、疾患の発症機序を明らかにする上で有用であるのみならず、その予知、リスク評価、予防、オーダーメード医療への展開においても重要である。糖尿病網膜症は最近の糖尿病患者の急増により増加しており、日本で毎年3000人が新たに失明に至っているが、有効な治療法が少なく、その疾患感受性遺伝子を明らかにすることは社会的にも重要な課題である。われわれは、まず糖尿病網膜症の中心的病態である血管新生、血管透過性亢進などに強く関与する血管内皮増殖因子(VEGF)に着目し、-634G>C多型などと網膜症および黄斑症との有意な関連を見出し、機能解析を加え報告した(Diabetes 51:1635-39,2002;BBRC 333:679-85,2005)。われわれの報告を嚆矢として、VEGF遺伝子多型と筋萎縮性側索硬化症などのさまざまな疾患との関連もその後報告され、糖尿病網膜症との関連も1型糖尿病の前向き研究であるDCCT/EDICなどの報告で確認された。今回、網膜色素上皮細胞などから豊富に産生され、神経網膜の保護に重要であるとともに強力な血管新生抑制因子である色素上皮由来因子(PEDF)に着目した。PEDFは血管透過性亢進の抑制作用、VEGFの発現抑制および抗炎症作用もあり、VEGFと拮抗的に働く糖尿病網膜症・黄斑症の発症の重要な阻止因子と考えられる。アミノ酸置換を伴うMet72Thr多型との関連は認められなかったが、PEDF遺伝子プロモーター領域の2つの多型(rs12150053,rs12948385)と糖尿病網膜症との強い関連(オッズ比2.4,P=0.0004)を認めた(Biochem Biophys Res Commun 361:421-426、2007)。さらに、VEGF遺伝子-634G>C多型との交互作用も認め、相乗的に糖尿病網膜症の発症に関連していた。
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