2008 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞増殖因子トランスジェニックマウスを用いた発癌機序の解析
Project/Area Number |
19592053
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
市川 武 Gunma University, 医学部, 助教 (60420105)
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Keywords | 横紋筋肉腫 / 遺伝子 / シグナル伝達 / 悪性黒色腫 |
Research Abstract |
我々は悪性黒色腫および横紋筋肉腫の発生機序をさらに詳しく調べるため、肝細胞増殖因子トランスジェニックマウス(HGF/SFtgマウス)と癌抑制遺伝子であるArf、Ink4a、p53それぞれのノックアウトマウス(Arf-/-マウス、Ink4a-/-マウス、p53-/-マウス)のダブルマウス(HGF/SFtg+Arf-/-マウス、HGF/SFtg+Ink4a-/-マウス、HGF/SFtg+p53-/-マウス)を作成し、発生した悪性黒色腫、横紋筋肉腫を解析した。HGF/SFtg+p53-/-マウスは生後平均1.4か月で高率に横紋筋肉腫を発生したが、悪性黒色腫の発生は認めなかった。HGF/SFtg+Arf-/-マウスでは生後平均3.6か月で横紋筋肉腫を発生し、同時に悪性黒色腫の発生も認めた。HGF/SFtg+Ink4a-/-マウスでは高率に悪性黒色腫発癌を認めたのに対して横紋筋肉腫発癌は僅かであった。この結果からHGF/SFの過剰発現とArf-p53経路の不活性化は横紋筋肉腫発癌を引き起すこと、p53の不活性化と悪性黒色腫発癌とは関連を認めなかったのに対して、Arfの不活性化が悪性黒色腫発癌に関与していることが示された。このことからシグナル伝達においてp53の上流に位置するとされているArfがp53を介しない経路で悪性黒色腫発癌の抑制をしている可能性が示唆された。HGF/SF過剰発現とInk4a-RB経路の不活性化は悪性黒色腫発癌に関与する一方で、横紋筋肉腫発癌への関与は否定的であった。我々はHGFtg+p53-/-々ウヌだけでなくp53遺伝子がヘテロなHGF/SFtgp53+/-マウスに発生した横紋筋肉腫の解析も行ったが、腫瘍部においては解析した全例でwild typeのp53遺伝子は消失しており、loss of heterozygosity(LOH)を認め、このことからもp53の不活性化が横紋筋肉腫発癌を引き起すことがうかがわれた。
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