Research Abstract |
三次元形状を有数するヒト耳介軟骨を再生誘導し、再生軟骨の力学的特性を調べる目的で,Instronを用いて再生軟骨の折り曲げ応力を測定した。実験では、Instron series 5565 (Instron corporation, Canton, MA, USA)を用いて,採取した再生耳介形状軟骨の折り曲げ応力を計測した。まず、ドーム状の再生軟骨標本を台座に固定した。幅1mm長さ4cmの垂直板で上方から圧迫し、その応力をInstronで検出した。この際、垂直板は、再生耳介の耳輪脚を通る横軸に合わせて設置した。垂直板が標本に接し、さらに0.03〜0.06mm下がる時、0.2Nの反発応力を記録したので,この点を基準点とした。続いて,垂直板を基準点から3mm下降(60mm/min)させ,このときの反発応力をコンピューター(FMV C24C; Fujitsu Ltd., Tokyo, Japan)に入力した。この操作によって、再生耳介軟骨が3mm折り曲がったときの応力を“しなやかさ"として計測した。標本の取り付けから試験が終了するまでの期間は,標本に生理食塩水を噴霧し,乾燥を防止した。 その結果,耳介軟骨細胞,肩関節軟骨細胞,鼻中隔軟骨細胞に由来する再生軟骨群において,経時的に正常ウシ耳介軟骨の性状に近づく傾向を認めた。一方,肋軟骨細胞に由来する再生軟骨群では,軟骨の物理学的性状は失われ,著明な硬化傾向を認めた。これらの結果から,in vivoにおいて,耳介軟骨細胞,肩関節軟骨細胞,鼻中隔軟骨細胞に由来する再生軟骨群は,三次元形状を維持しながら,軟骨の細胞外基質を産生し,正常耳介軟骨群の力学的特性に近づくことが示唆された。一方,肋軟骨細胞に由来する再生軟骨群は形状と力学特性の両面から耳介軟骨と異なっており,肋軟骨は軟骨採取部位として不適切であることが示唆された。
|