2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経損傷に起因する口腔顔面領域の病的疼痛の発症機序に関する研究
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19592111
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
杉本 朋貞 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50135729)
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Keywords | 神経切断 / 三叉神経 / c-Fos / 脊髄路核 / 尾側亜核 / 吻側亜核 / 神経因性疼痛 / 舌神経 |
Research Abstract |
三叉神経末梢枝の切断によって惹起される三叉神経核内2次ニューロンの興奮性変化を研究するため、成熟雄性S.D.系ラットにペントバルビタール麻酔を施し、顎下部の皮膚を切開した後、舌筋の間を通る部位で舌神経を切断した。2週間後に再度麻酔を施し、舌神経の切断端を再露出し、双極電極を用いて0.1mA、0.5msの矩形波で5Hz、10分間の電気刺激を加えた。刺激の2時間後にホルムアルデヒドを用いた潅流固定を行い、三叉神経知覚核群を含む下位脳幹の50μm厚連続凍結切片を作成し、c-Fosタンパクの免疫染色を施した。対照実験として、神経露出のみを行い、切断を行わないものに電気刺激を加えた。 c-Fos陽性ニューロンは刺激側の三叉神経脊髄路核のうち、尾側亜核吻側部の背側部のI~IV層および吻側亜核の背内側部にみられた。吻側亜核背内側部のc-Fos発現部位の周辺の孤束核および付近の網様体にもc-Fos陽性ニューロンがみられた。尾側亜核では1切片あたり約77個のc-Fos陽性ニューロンがみられ、対照群の約71個と比較して有意差がみられなかった。一方吻側亜核では、実験群で1切片あたり約40個のc-Fos陽性ニューロンがみられ、対照群の約25個と比較して有意の増加を示した。 吻側亜核の背内側部は口腔内の受容野に特化した侵害情報の中継核と考えられている。本研究代表者は、舌神経に替えて眼窩下神経の切断と刺激を行う実験に着手しているが、眼窩下神経に上記条件で電気刺激を行った場合、事前の神経切断の如何にかかわらず吻側亜核にはc-Fosの発現はほとんどみられないことがわかってきた。このことから、吻側亜核は神経損傷後の病的疼痛の発現メカニズムにおいても口腔内受容野に特化した病態発現部位であり、口腔内の神経因性疼痛の予防法や治療法開発のターゲットとなる可能性が高い。
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