2008 Fiscal Year Annual Research Report
骨芽細胞から骨細胞への終末分化と生存における低酸素応答因子HIFの役割
Project/Area Number |
19592126
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
坂倉 康則 Health Sciences University of Hokkaido, 歯学部, 教授 (60128915)
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Keywords | 骨芽細胞 / 骨細胞 / 低酸素応答因子 / 免疫組織化学 / 下顎骨 / 歯槽骨 |
Research Abstract |
骨は生きた組織で、骨の中に埋め込まれた細胞(骨細胞)は骨の改造に関わる。骨の表面で活発に骨を造っている骨芽細胞は自ら埋まり骨細胞となる。しかし、骨細胞は石灰化した硬い基質で取り囲まれ、栄養と酸素に乏しい環境に置かれることとなる。昨年度には骨芽細胞と幼若な骨細胞において低酸素で安定化するHIF-1αが発現していることを明らかにした。今年度、下顎骨の骨表面より深層に位置する骨細胞でのHIF-1α、HIF-2βとOxygen-related protein150(ORP150)を検討した結果、下顎底においてHIF-1αは表層から3・4層の骨細胞ではほとんど発現しておらず、より深層の骨細胞に強く反応がみられた。これはHIF-2αでも同様であった。しかし、ORP150は骨表層から5〜10層の骨細胞のみに弱い反応があった。これとは対照的に、第1臼歯舌側歯槽骨では比較的新しい骨の骨細胞に限ってこれら低酸素応答因子はまったく認められず、骨改造の痕跡線を境に劇的に染色性が異なっていた。これらの結果は、3種の低酸素応答因子の染色性が個々の骨細胞の酸素濃度環境を反映していることから、下顎骨表層に近い骨細胞は骨膜側から十分な酸素供給を受けていることが明らかとなった。また、骨細胞への栄養と酸素が骨細管を介して供給されていることを考えると、歯槽骨で骨改造の痕跡線を境に劇的に染色性が異なったことは、その痕跡線を境に骨細管ネットワークが断裂したことに起因するものと考えられる。現在、樹立された骨芽細胞と骨細胞の培養系で低酸素環境下での生存に関与する遺伝子発現の解析を進めている。
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