2008 Fiscal Year Annual Research Report
ニコチンによる神経伝達物質トランスポーター機能発現の修飾とその疼痛制御への関わり
Project/Area Number |
19592146
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大山 和美 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (00253021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 滋雄 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (80177873)
十川 千春 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10253022)
十川 紀夫 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (30236153)
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Keywords | ニコチン / トランスポーター / ノルアドレナリン / 鎮痛 / 転写 |
Research Abstract |
神経伝達物質トランスポーターは,神経終末より遊離された伝達物質を再取込みすることにより、その神経伝達を速やかに終結させる役割を担っている。本研究は、歯科臨床において問題となる神経因性疼痛におけるモノアミン神経伝達物質トランスポーターの役割に焦点をあて,鎮痛効果を有するニコチンのモノアミントランスポーター機能発現の対する影響とその機序を探索した。 前年度の検討から,当初予想したNET転写活性に対するニコチンの影響が認められなかったため,これまでの研究で示唆されていたニコチンのNET発現調節の機序は転写後修飾である可能性が強くなった。本年度は,このNET転写後修飾の機序に焦点を当て,PC12細胞をノルアドレナリン神経細胞モデルとして用い解析を行った。 まずレポーターアッセイにより,PC12細胞においてもニコチンはNET遺伝子転写活性を促進しないことを確認した。 NET mRNA発現レベルの解析は,RT-PCR法により探索した。ニコチンは用いたいずれの濃度(1-1000uM,48h),処置時間(6-48h)においてもNET mRNAの発現量に影響を及ぼさなかった。しかし,短時間のニコチン処置の効果を調べた結果,10uMニコチン2時間処置により一過性のNET mRNAレベルの上昇が観察された。 ウエスタンブロット法によるPC12細胞NET蛋白発現の解析において, ニコチン処置(10uM,48h)は,NET蛋白発現量に対して有意な変化をもたらさなかった。しかし,ニコチン6時間処置ではNET蛋白発現量の増加が認められた。 以上の結果から,ニコチンはnAChRを介したNET遺伝子転写後の調節機構によりNET mRNA量を増加させ,蛋白発現を増加させることが示された。NET蛋白発現の増加は,ノルアドレナリン再取り込みの促進によりシナプス間隙でのクリアランスを増加させることでノルアドレナリンのターンオーバーを促進し,アドレナリン神経伝達を強化すると考えられる。ニコチンのこうした効果は,侵害受容における脊髄下降性抑制路の賦活化をもたらし,これがニコチンの鎮痛効果の背景をなす可能性が示唆された。
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