2008 Fiscal Year Annual Research Report
微生物由来リポタンパク質およびリポペプチドの腫瘍増殖に及ぼす影響
Project/Area Number |
19592166
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木浦 和人 Hokkaido University, 大学院・歯学研究科, 専門研究員 (50435947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 健一郎 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50145265)
長谷部 晃 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (90281815)
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Keywords | 自然免疫 / アジュバント / 坑腫瘍免疫 / 制御性T細胞 / 抗体依存性細胞傷害活性 |
Research Abstract |
CD4^+CD25^+Foxp3^+制御性T細胞(Treg)は、胸腺に由来し、ヒトやマウスでは末梢CD4^+T細胞の約5〜10%を占め、自己反応性T細胞の活性化を抑制したり、過剰な免疫応答を抑制することで免疫系における恒常性を維持している。また、腫瘍の微小環境において、Tregは腫瘍に対する免疫応答を抑制し、腫瘍の増殖に有利な環境をつくっていることが報告されている。最近、自然免疫系で微生物の侵入を感知するTbn-like receptor(TLR)のいくつかがTregにも発現しており、特にTLR2はTregの機能の制御にかかわっていることが報告された。そこで、本研究ではTLR2のリガンドであるリポペプチドFSL-1がin vivoにおいて腫瘍増殖に対してどのように影響するかを調べ、腫瘍免疫アジュバントとして知られているTLR9のリガンドであるCpGと比較した。 FSL-1もしくはCpGをマウスの皮下に腫瘍接種前に1週間隔で4回免疫した後、C57BL/6由来線維肉腫(QRsP)を接種し、経時的に体積の測定および生存率を測定した。FSL-1を免疫した場合は、腫瘍の増殖が著しく促進され、また生存率も著しく低下した。しかしながら、CpGを免疫した場合、そのような現象は見られなかった。このことから、FSL-1を投与することによって、Tregが活性化され、抗腫瘍免疫応答を抑制したために腫瘍の増殖が促進されたのではないかと推測した。実際、FSL-1を免疫した後、所属リンパ節中のCD4^+CD25^+細胞におけるFoxp3陽性細胞の割合が優位に高いことがわかった。また、マウスの脾臓よりMACSを用いてTregを分離し、FSL-1、CpGおよびE. coliLPS(TLR4リガンド)で刺激したところ、FSL-1刺激でのみTregの増殖が見られた。さらに、腫瘍を接種する3日ならびに1日前に抗CD25抗体を腹腔に投与したところ、FSL-1投与による腫瘍の増殖促進はみられなかった。また、TLR2ノックアウトマウスを用いた実験でも、FSL-1投与による腫瘍の増殖促進はみられなかった。 以上のことから、FSL-1投与による腫瘍の増殖促進は、FSL-1刺激でTregの増殖促進がTLR2依存的に誘導され、その結果として免疫抑制状態が増強されたために腫瘍の増殖が促進されたものと推測された。
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