2008 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病による脳炎症誘発および加齢に伴う増悪における「髄膜-グリア連関」の破綻の関与
Project/Area Number |
19592171
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
新道 まゆみ Okinawa Institute of Science and Technology, 神経生物学ユニット, 研究員 (10444796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 博 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (20155774)
武 洲 九州大学, 大学院・歯学研究院, 学術研究員 (10420598)
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Keywords | 病者行動 / アジュバント関節炎 / 髄膜-グリア / 脳炎症 / 密着結合タンパク質 |
Research Abstract |
慢性感染症時には病者行動と呼ばれる食欲低下、体重減少、疲労感、鬱などの生理的・精神的変化が誘発される。病者行動は加齢により増悪することが知られているがそのメカニズムについては不明な点が多い。平成19年度、若齢ラットではアジュバント関節炎に伴い髄膜ならびにそれに近接したグリア細胞に抗炎症性サイトカインのIL-10ならびにTGF-β1の発現が認められ、中年ラットでは炎症性サイトカインのIL-1β1ならびにプロスタグランジンE合成酵素が発現することを明らかにし、『加齢に伴うグリア細胞の末梢炎症に対する反応の変容が病者行動の加齢に伴う増悪において重要である』ことを示唆した。平成20年度は、『末梢炎症の髄膜バリア機能が加齢に伴って変容するのか』を明らかにする目的で、若齢ならびに中年ラットにおいてアジュバント関節炎に伴う(1)末梢性炎症細胞の脳実質内への浸潤、ならびに(2)髄膜における密着結合タンパク質(オクルディン、ZO-1)の動態を解析した。若齢ラットではアジュバント関節炎のピーク時においても末梢性炎症細胞の脳実質内への浸潤ならびに密着結合タンパク質の変化は認められなかった。一方、中年ラットではアジュバント関節炎に伴い好中球ならびにヘルパーT細胞の大脳皮質脳実質内への浸潤が見られた。さらに、オクルディンならびにZO-1の免疫反応性も有意に低下した。さらに初代培養髄膜細胞を用いて解析した結果、IL-1βはオクルディンの発現を抑制し、プロスタグランジンE_2はZO-1の発現を抑制することが明らかとなった。このことから中年では末梢炎症時にグリア細胞から産生分泌されるIL-1βならびにプロスタグランジンE_2は密着結合タンパク質の発現を低下させ、末梢性炎症細胞の脳実質内への浸潤を促進することで脳炎症をさらに増強することが強く示唆された。
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