2007 Fiscal Year Annual Research Report
ニコチンとLPSが歯槽骨吸収を促進して歯周病を増悪する分子機構の解明
Project/Area Number |
19592182
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
前野 正夫 Nihon University, 歯学部, 教授 (60147618)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 直人 日本大学, 歯学部, 准教授 (10226532)
田邊 奈津子 日本大学, 歯学部, 助教 (10409097)
|
Keywords | 喫煙 / 歯周病 / ニコチン / リポ多糖(LPS) / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / プロスタグランジンE_2 / シクロオキシゲナーゼ |
Research Abstract |
喫煙は、歯周病における環境面からみた最大のリスクファクターであり、歯周病の発症や進行および治療効果の低下に大きく関与する。骨吸収の主役を演じるのは破骨細胞であるが、破骨細胞形成の初期段階では骨芽細胞の存在が不可欠である。我々は、歯垢中の嫌気性の歯周病原因菌由来のリボ多糖(LPS)刺激の強弱を口腔清掃状態良否の指標として捉え、まずニコチンとLPSが骨芽細胞のプロスタグランジンE_2(PGE_2)産生、シクロオキシゲナーゼ(COX),PG受容体(EP1-4)およびマクロファージ刺激因子(M-CSF)の発現に及ぼす影響を調べた。その結果、LPSは、ニコチン刺激によって増加したPGE_2産生、COX-2、EP4およびM-CSF発現をさらに増加させた。また、ニコチンとLPSの同時刺激で増加したM-CSF発現は、COX-2阻害剤添加によって、コントロールレベルまで低下した。これらの結果から、LPSは骨芽細胞のCOX-2発現増加を介してニコチン依存性のPGE_2産生量をさらに増加させること、また、増加したPGE_2はautocrineに骨芽細胞に作用し、M-CSF産生を介して破骨細胞形成を促進させることが示唆された。次に、破骨細胞の機能発現に着目し、酸を産生して無機質溶解を担う炭酸脱水酵素(CAII)と有機質分解を担うカテプシンK(CK)の発現に及ぼすニコチンの影響を調べた。その結果、ニコチン刺激によってCAII発現は増加したが、CK発現は低下した。この相違は、細胞内シグナル伝達の違いによるものと推定され、その詳細は次年度に取り組む予定である。その他、次年度に取り組むための関連実験として、歯周病原因菌の代謝産物である酪酸が、低濃度では石灰化物形成を促進し、破骨細胞の形成を抑制すること、また、IL-6がsoluble IL-6受容体の存在下で、軟骨マトリックスタンパク産生を促進することを明らかにした。これらの内、酪酸の影響については、LPSとニコチン刺激を絡めた研究を次年度に取り組みたいと考えている。
|