Research Abstract |
レジンセメントの初期硬化挙動および弾性率は,審美性修復物の口腔内寿命に影響を及ぼすことから重要な性質と考えられている。そこで,再修復を行う際の客観的指標(Evidence)を確立することを目的として,超音波パルス法を用いてレジンセメントの初期硬化挙動および弾性率を非破壊的に検討した。 超音波伝播時間の測定には,超音波送受信装置であるパルサーレシーバー(Model 5900,Panametrics),探触子として内径5mmの縦波用トランスデューサー(V112,Panametrics)およびオシロスコープ(Wave Runner LT584,Lecroy)を使用した。各製造者指示に従って練和したセメント泥を,試料台に静置した白色テフロン型に填塞し,ラッピングフィルムを介してトランスデューサーを接触させ,超音波の伝播時間を経時的に測定し,各試片の厚みとから音速を求めた。照射条件は600mW/cm^2,200mW/cm^2および照射なしの3条件で,その各条件にプライマー塗布したものと塗布しないものの計6条件とした。また,試片の密度をElectronic Densimeter(ED-120T,Mirage)を用いて測定し,計算式に代入して弾性率を算出した。 その結果,供試したいずれのセメントにおいても光線照射開始から,セメント内部を伝播する音速は上昇したが,その傾向は製品によって異なるものであった。すなわち,光線照射の影響を受けやすく短時間で音速が上昇するものと,緩やかに上昇するものとに分けられた。また,光強度やプライマーの有無によって,初期硬化挙動に明らかな違いが認められた。弾性率の測定においても,製品間で光強度とプライマーの有無による違いがあり,24時間後の測定では弾性率が上昇する傾向が示された。したがって,レジンセメントの物性向上には,適切な強度の光線照射およびプライマーの使用が必要であり,これによって審美性修復物の予後を安定させることができるものと考えられた。
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