2008 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロアレイ解析に基づく歯の喪失と脳機能に関する研究
Project/Area Number |
19592227
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高津 匡樹 Nihon University, 歯学部, 准教授 (50343033)
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Keywords | マイクロアレイ / 歯の喪失 / 海馬 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
臼歯咬合を喪失したマウスでは、空間記憶学習能が低下するとともに、記憶中枢である海馬では、錐体細胞や神経伝達物質分泌量が減少することが報告されている。しかし、そのメカニズムや臼歯咬合喪失が記憶学習能以外の脳神経の機能や疾患に及ぼす影響については不明である。そこで本研究では、老齢期マウスの臼歯咬合喪失が脳の機能や疾患に及ぼす影響を明らかにするため、平成19年度にDNAマイクロアレイを用いて抜歯に伴う海馬の遺伝子発現変動を網羅的に解析した。平成20年度はまず、抜歯に伴う海馬錐体細胞の組織形態学的変化について検討した。その結果、本研究で用いたマウスにおいても、他の系統と同様に臼歯咬合喪失に伴う海馬錐体細胞数の減少を認めた。さらに、データマイニングによりマイクロアレイデータの詳細な解析も行った。Gene Ontology解析により発現変動遺伝子の機能を検索したところ、神経伝達物質の輸送・放出制御や受容体などの神経機能や、統合失調症などの脳疾患に関与する遺伝子が存在していた。このことは、臼歯咬合の喪失が記憶学習能だけではなく、脳における種々の現象に影響を及ぼす可能性を示す。なかでも、統合失調症と関連するZdhhc8遺伝子の発現低下は、歯の喪失が統合失調症に随伴する認知機能障害に影響する可能性を示すものであった。また、KEGG pathway解析において、Ryr1およびGria2遺伝子が長期抑制のシグナル伝達経路に含まれることが示され、臼歯咬合喪失に伴う記憶学習能低下における長期抑制の関与を遺伝子発現レベルで示唆し、メカニズム解明の一助となりうるものと考えられた。
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Research Products
(1 results)