2007 Fiscal Year Annual Research Report
破骨細胞分化メカニズムに関与する免疫機能の分子生物学的解析
Project/Area Number |
19592294
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
水川 展吉 Okayama University, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (00263608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山近 英樹 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (10294422)
高木 愼 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (40116471)
山合 友一朗 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (00158057)
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Keywords | 骨粗鬆症 / 1,4-dihydroxy-2-naphthoic acid(DHNA) / 破骨細胞 / Bifidogenic growth stimulator / IL-1β・IL-6・TNF-α |
Research Abstract |
急速な高齢化社会への移行に伴い、加齢による骨粗鬆症の増加は患者のQOLを著しく低下させている。ヒトの骨量は18歳ころをピークとし、加齢とともに骨組織は減少し、その結果骨折を起こしやすくなる。本邦において寝たきりの原因第1位が脳卒中、第2位が老衰、第3位が骨粗鬆症による骨折であることから、骨粗鬆症は高齢化社会が抱える問題の一つである。これに対応するための手段は、骨吸収のメカニズムを解析し骨吸収の抑制、骨破壊の防止・阻止をすることである。そのため利用頻度の高い食品に添加でき、骨粗鬆症が改善できる物質の開発が望まれていた。我々は明治乳業との共同研究によりプロピオン酸菌の発酵産物(PC)よりビフィズス菌増殖因子(Bifidogenic growth stimulator)である1,4-dihydroxy-2-naphthoic acid (DHNA)を見出した。このDHNAは近年骨量改善作用を持つことで注目されている。これまでに我々はDHNAの骨代謝改善作用について検討を行ってきた。その結果DHNAは破骨細胞の分化を抑制し、骨粗鬆症を改善させることが認められた。そしていくつかの骨粗鬆症モデルでDHNAの効果を検討したところ、特に我々の開発した骨粗鬆症モデルに有意に効果があることがわかった。以上のことから下記の実験計画を立案し、研究を行った。 (1)骨粗鬆症実験動物モデルとDHNA投与モデルの骨組織比較検討 骨粗鬆症モデルマウスに対しDHNAを投与し、骨代謝改善作用を組織学的・X線学的に解析を行った。 (2)DHNA投与による全身的な影響についての検討 DHNA投与における全身的な骨代謝改善効果について、骨代謝と関連性のある臓器に注目し、大腸組織・腎機能の病態変化を比較検討した。 (3)骨吸収性サイトカインの動態 骨粗鬆症モデルマウスとDHNA投与マウスとの血清より炎症性サイトカインの計測・比較を行った。 (4)培養実験における破骨細胞の動態 過去の基礎研究によりDHNA投与により骨吸収抑制効果が確認されているが、そのメカニズムを培養実験における破骨細胞の動態を観察・検討した。 成果 骨粗鬆症実験モデルマウスに対しDHNAの投与を行った結果、局所での骨代謝改善が確認された。DHNA投与を行ったマウスは、骨粗鬆症発症させたモデルと比較し大腿部骨組織の破壊・吸収の程度が軽減されていることが確認された。また同部の軟X線撮影を行ったが、DHNAを投与したマウスでは骨密度は骨粗鬆症モデルより高いことが確認された。DHNAは本来Bifidogenic growth stimulatorであることから、整腸作用をはじめ生体に多様な有益作用があることが認知されている。今回は骨代謝と関連性の高い臓器に注目したが、DHNA投与マウスは大腸組織の炎症程度は軽度にあり、血清より測定した腎機能(Cr・BUN)・血中カルシウム濃度の値も減少していた。同様に血清中から多種サイトカインの計測をおこなったが特に骨の炎症・破壊に関与するサイトカイン(IL-1β・IL-6・TNF-α)の値はDHNA投与したモデルで減少していることが確認された。マウスの骨髄由来の破骨細胞を培養したところ、DHNAを投与したマウスの破骨細胞は骨粗鬆症モデルより細胞数が減少し、分化の程度も低分化であった。これらの結果よりDHNAが骨粗鬆症改善作用を示すことが確認された。しかしDHNAの破骨細胞抑制機序については遺伝子あるいはタンパクレベルでの検討が必要であると判断した。今後は骨吸収を担う破骨細胞への直接的な作用について検討を行う予定である。
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