2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19592307
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
川上 哲司 Nara Medical University, 医学部, 講師 (60254512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 康春 琉球大学, 医学部, 教授 (20124878)
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Keywords | 歯学 / 顎関節 / 滑膜細胞 |
Research Abstract |
顎関節症の誘因のひとつとして、ブラキシズムやクレンチングなどの習癖による顎関節構成体への過度の機械的ストレスが挙げられているが、その病理学的機序については依然不明な点が多い。われわれは、顎関節構成体における機械的ストレスを受容する組織として滑膜を想定し、伸展ストレスが培養滑膜細胞にCOX-2(cyclooxygenase-2)を誘導し、その主要な転写因子であるNF-κB活性を高めることを報告した。しかし、本実験系ではクレンチングのような静的なメカニカルストレスは表現できない。閉鎖された関節腔に存在する滑膜細胞が受容する慢性的な機械ストレスは、伸展ストレスではなく、静水圧ストレスである可能性が高いと考えられる。そこで、静水圧による滑膜細胞の応答を解析する実験系の確立を目的とした一連の実験を企図した。平成19年度は、顎関節症患者の関節内圧を測定し、病態による顎関節内圧の変化、咬合力と内圧との相関について調べた。奈良県立医大口腔外科外来にて、顎関節洗浄療法施行時に動脈圧モニタリング用トランスデュサーを応用して関節内圧を測定し、同時にその際の咬合圧を測定した。その結果、性別や年齢による個体差が大きいものの、概ね咬合力と顎関節内圧は正の相関を示した。この結果は強い噛みしめが関節内圧力を高め、滑膜細胞への静水圧負荷が生じることを示唆している。平成20年度はこれらの結果を受けて、静水圧負荷を培養滑膜細胞に付与する実験装置を試作し、その応答を解析した。その結果、静水圧は伸展ストレスで誘導が顕著であったCOX-2をほとんど誘導せず、iNOS(inducible nitric oxide synthase)を誘導することが示された。iNOSは刺激に応答してNOを産生する酵素であることから、噛みしめによる静水圧ストレスは、顎関節腔内の酸化ストレスを高める可能性を示唆している。
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Research Products
(1 results)