Research Abstract |
1.hCAP18/LL-37合成ペプチドと他の抗菌蛋白質およびペプチドの併用効果による口腔感染症の制御 生体内では,単独の抗菌ペプチドで殺菌効果を示すことはなく,多くは様々な抗菌ペプチドによる相互作用で,殺菌作用が有効になされるものと推測される.そこで,hCAP18/LL-37とdefensin,lactacin,lactferrinの単独及び併用による歯周炎関連菌に対する殺菌効果を検討した.その結果,lactferrin以外は,殺菌効果の増強を認めた.hCAP18/LL-37にlactacinを併用することにより,相加的な,または,defensinとの併用により相乗的な殺菌効果を示した. 2.hCAP18/LL-37による抗腫瘍効果増強の試み hCAP18/LL-37 27残基合成ペプチドを用いて,癌細胞に対する選択性を保持したまま殺細胞効果を増強する試みを検討した.hCAP18/LL-37とdefensin,lactacin,lactferrinの併用による殺細胞効果への相加および相乗作用の有無について検証した.その結果,defensinは抗腫瘍効果の増強がみられなかったが,lactacinまたはlactferrinとの併用により,相加的に抗腫瘍効果が増強した.2つの抗菌物質を用いることで,単独に比べ,濃度を低く抑えられることが示唆された.3.抗菌ペプチドによる樹状細胞の分化誘導とTリンパ球誘導作用 hCAP18/LL-37の27残基合成ペプチドが,樹状細胞の表面抗原のHLA-DRやCD86分子の発現の増強を検討した.その結果,hCAP18/LL-37濃度依存性に樹状細胞に発現するHLA-DRやCD86分子を発現増強することを確認した.このことから,癌細胞をすみやかに認識させ生体内免疫機構による癌細胞の排除を促進する可能性が推測された.また,hCAP18/LL-37は,T細胞の異常増殖による免疫異常をきたした際に,活性化T細胞に選択的に殺細胞効果を発揮することを明らかにした.この効果は,癌細胞で認められたアポトーシスの増強によることを示した.
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