Research Abstract |
1.ヒト歯肉上皮細胞での検討:ヒト歯肉上皮細胞のDNAマイクロアレイ分析により,抗菌ペプチドを含む口腔内のロバストネス関連因子の発現を調べた。その結果,Calprotectin (S100A8/S100A9),Lipo-calin2, Secretory leukocyte peptide inhibitorやAdrernome dullinなどの抗菌ペプチドは,非刺激時(通常時)でも高発現を示すことが判明した。また,上皮細胞の分化を促進するInterleukin1-α(IL-1α)で刺激した時,通常状態では低レベルであるβ-Defensin2,S100A7およびRNase7などの抗菌ペプチドの発現が上昇した。この結果,生体を感染から守る口腔内発現抗菌ペプチドには,通常時に作用するものと外的刺激に対して反応するものがあることがわかった。さらに,自然免疫に関連するToll-like receptor類は発現レベルが低く,ケモカインリガンド(CXCL)についてはCXCLの1,2,5,10,11,14と16の発現が認められたが,これらについてもCXCL14以外,比較的発現レベルは低かった。 2.ヒト口腔上皮細胞での検討:ロバストネス強化を目的として,前年度に検討を行った漢方薬,小柴胡湯の抗菌ペプチド発現に及ぼす影響をDNAマイクロアレイ法で調べた。その結果,小柴胡湯によりPeptidase inhibitor3(SKALP), S100A12, S100A7およびS100A8などの抗菌ペプチド発現が増加することが判明した。 本研究により,口腔内の上皮細胞で発現する抗菌ペプチドの動態が明らかになり,IL-1αや小柴胡湯により抗菌ペプチド発現を上昇させることで歯周病を含む感染症に対するロバストネスを強化できる可能性が考えられた。
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