Research Abstract |
19年度実績報告において若年者に対する唾液腺マッサージの有効性を報告した。最終年度となる本年度は,健常高齢者13名(81.5±4.1歳)を対象に,1.唾液腺マッサージ直後(短期間)の唾液分泌に対する効果の検討,2.唾液腺マッサージに対する実態調査,3.長期間の唾液腺マッサージ効果の検討,4.酸刺激による唾液腺の分泌予備能力に関する検討,5.分泌タンパク質への影響について検討した。唾液腺マッサージを自分自身で行う場合を自己マッサージ,他者が施術する場合を他者マッサージとした。その結果 1.唾液腺マッサージ直後の唾液量増加効果は,自己マッサージ直後の増加者は45.5%,他者マッサージ直後では30.8%であった。また,自己マッサージ,他者マッサージともに安静時唾液量の少ない者に唾液量増加効果がみられた。 2.実態調査は,他者マッサージ時は緊張するものの,人に触れられる嫌悪感は少なく,自己マッサージ,他者マッサージともに好ましいと思っていた。唾液流出感にっいては,自己マッサージ中で約8割,他者マッサージ後で約9割の者が唾液流出を感じていた。 3.当初,安静時唾液の少ない口渇感を訴えた5名の高齢者の安静時唾液量は6ヶ月後と1年後で現状維持か,または僅かな増加傾向を示した。 4.酸刺激により安静時唾液量は有慧に増加し,安静時唾液量の少ない高齢者でも唾液分泌予備能力があることが示された。また,口渇感は有意に改善されていた。 5.唾液腺マッサージと酸刺激により,高齢者の一部に唾液タンパク質が増加した。 これらのことより,高齢者の唾液腺マッサージの短期間効果が示唆され,長期間の唾液腺マッサージによる安静時唾液量の維持および口渇感の改善に果たす有効性も認められた。2年間の研究により,若年者,高齢者に対する唾液腺マッサージによる唾液腺機能の賦活が示唆され,唾液腺マッサージが口腔健康維持に役立っ可能性が示された。
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