Research Abstract |
平成22年度の研究は,縦断調査によって得られたデータを用いて,1年間の間に増悪した者(気道感染を起こした者)とそうでない者とのベースライン時点の観察内容を比較し,増悪に関連する要因を検討することを目的とした.本年度は,用いている療養法,病気の目安に用いている症状やサインに違いがあるのかについて焦点をあてて検討を行った. 1.分析対象者:ベースライン時の病期は,II期40.8%,III期22.2%,IV期(=在宅酸素使用)37.0%で,年齢は平均73.6歳(SD=3.7),男性100%,%FEV_<1.0>=47.9%(SD=13.9)であった. 2.用いている療養法および目安やサインをみると,増悪した群では療養法のひとつとして"ストレスをコントロールする"とした者が多く(p<0.05),"気分"を体調の目安にする者が多かった(p<0.05),しかし,"自己管理のために症状や薬を記録する","外出時吸入薬を携帯・使用して息切れをコントロールする"者は全くいなかった.なお,1年間の間に増悪した者とそうでない者で,努力性肺活量(FVC),1秒量(FEV_<1.0>),息切れの程度,BMI,過去1年間の増悪エピソードに違いは認められていない. 以上の結果は,増悪を予防していくうえで,患者の心理状態を把握することの必要性を示唆するものである.増悪した者は,そうでない者に比べ,ベースライン時のコントロール可能性(病気や症状に対する認知的評価)の得点や息切れの対応に対する自信(課題特異性自己効力感)が有意に低い(p<0.01)ことも示されており,息切れをコントロールするために必要な療養法を患者が身につけられるように,患者がセルフマネジメント力を高められるように支援することの必要性が示唆された.
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