Research Abstract |
本研究の目的は,母乳外来における母親への母乳育児支援の有用性を検討することである。 結果 1.産後1か月時の母乳育児率からみた有用性の検討 (1)母乳外来開設前後での母乳育児率の違いを検討した。結果,開設前後での母乳育児率には違いを認め,開設後,産後1か月での母乳育児率は57.0%から80.3%と上昇していた。 (2)産後の母乳育児に影響する要因を分析した。結果,産後1か月での母乳育児に影響を与えていた要因は,『退院時母乳育児である』ことであった。 (3)母乳外来受診の有無別に,母乳育児形態(退院時-産後1か月時)がどのように変化したのかを検討した。結果,受診群では,退院時混合・人工乳であったが,1か月時母乳となった者が24名(11.6%)おり,1か月時に母乳育児が行えている者が退院時の総数からみて2名増えていた。一方,非受診群は,皆,退院時母乳育児であり,内7名(15.9%)の者が1か月時に混合・人工乳育児となっていた。 2.母乳外来でのケア分析,受診ニーズと満足調査 母乳外来で実施されているケアは,(1)母乳がこの児に足りているかどうか,(2)このまま母乳育児継続で良いかどうか,(3)母乳育児を中心として育児全般の困り事はないかどうかの3つの視点からアセスメントをし,ケアを行っていた。助産師のアセスメントに基づくケアは,母親のニーズに合致しており,母乳育児支援は,母児の心身の健康支援となっていた。 3.母乳外来でのケアコスト分析 ケアに要した時間は,平均54.5±12分で,調査施設での母乳外来の費用は3,300円である。経験5年目の助産師の1時間単価は,概算で2,000円程度であると算出される。ケアに要する他の費用を加味しても決して利益が多いとは言えない。ケアコスト分析は,今後更に満足レベルやケア効果を評価して算出する必要がある。 結論:母乳外来は,産後1か月時の母乳育児率に貢献しており、殊に,退院後の母子の心身両面からの支援が行われていた。今後,更に母乳外来のケア構造を分析し,より効率的・効果的な支援を検討する必要がある。
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