Research Abstract |
【研究目的】胃癌手術患者が,術後の消化管環境に適した食行動の獲得のために,試行錯誤を繰り返している姿は多くの先行研究で報告され,入院中における摂取量や愁訴の調整方法の学習が不十分であることが指摘されている.そこで我々は,胃癌手術を受ける患者を対象に,入院中に食事摂取量の調整を学習するプログラムを導入し,退院後の自己調整と早期栄養回復に貢献できるかを検討した.【対象者】参加協力の得られた患者は,入院中11名,そのうちの9名が手術後12週まで継続ができた.【プログラム】食事前後の体重差(1回摂取量)と腹部知覚および愁訴の有無を即時フィードバックすること,それらの数値と術後の体重減少から1日に必要な食事回数を調整することを意図した.このプログラムは,術前と術後流動食開始から手術後12週まで実施された.【栄養回復指標】術前・退院時および4・8・12週後の術前体重比,体組成(BMI,脂肪量・筋肉量),血液生化学値(TP,Alb)を測定した.【結果】摂取量比は入院中30%程度であったが,術後経過に従い漸次増加した.幽門側胃切除後患者(DG)では,12週経過後にほぼ術前値に達成していた.術前体重比とBMIは,DG5名のうち3名は術後8週目以降に増加・維持したが,胃全摘術後患者(TG)では12週まで減少し続けた.TP,Albは,術後1週間に最低値となり,4週目以降は正常範囲に回復した.また,1日の食事回数の調整について,1回摂取量と体重減少の2つあるいはいずれかの基準を使用した患者は7名であった.他の2名は,愁訴が大きく出現し,適切な調整ができなかった.【考察】DG患者では,愁訴が強くなければ,摂取量および食事回数が自己調整でき,体重減少を抑えることができていた.さらに,TG患者でも3名のうち2名が自己調整できており,体重減少が持続した場合も1日の総摂取量を保つことで,筋肉量の維持ができ,早期栄養回復に貢献できることが示唆された.
|