Research Abstract |
「血液透析患者の自己管理行動に影響する要因」において,新たな知見に限定して述べる。 1.医療従事者の病気行動への説明サポートが血液透析患者の自己効力感を高め、精神的健康を高めることが明らかになった。このことは、毎日の生活が死に直結している血液透析患者は、励ましや慰めなどの情緒的サポートよりも自分の生活に役立つ病気への説明助言を必要としている。 2.家族および医療従事者からのサポートは,自己効力感を介してセルフケア行動に間接的な影響を与えることが明らかになった.患者のセルフケアの対する効力感を高めることは,セルフケア行動の実施と定着につながる.セルフケアに対する高い効力感を維持するためには,家族や医療従事者からの支援が得られるような環境の整備が重要である.また,男性患者と比べて,女性患者(特に後期高齢者)が受領している家族からのサポートは少なかった.このことは後期高齢者に独居者が多いことを反映,後期高齢者女性に重点をあてた介入の必要性がある.カリウム・リン・塩分・水分の摂取量の制限について,「とても/まあまあよくできた」と回答した患者の割合は約6〜7割,適度な運動については5割を下回っていた.このことから,今後,食事・水分摂取量の管理,適度な運動の定着を図っていくことが課題である. 3.透析年数別による精神的健康について特筆すべき点は、精神的健康と16年以上という長い透析歴との関係を見た研究は過去になく,新たな知見と言える.75歳過ぎて透析開始となった後期高齢者は,うつ傾向にある。血液透析年数別に見た背景要因と精神的健康との関連は,「透析1年以下」は,なれない透析後の倦怠感が精神的健康を低くしており,導入期,安定期へと透析の各治療段階で起こりうるさまざまな身体症状や合併症について説明し,軽減させるためのケアについて医療従事者のサポートが必要である.また,「2-5年」群は比較的精神的健康が安定している.「6-15年」群は比較的安定しているが,セルフケア行動に対する自己効力感を高く維持するために,医療従事者の支援が得られるような環境の整備が必要である.「16年以上」群は,身体的な自覚症状や合併症(関節痛)があるため,患者へのサポートが非常に重要な時期である.多くのセルフケアに向けての課題をクリアできるように支援する必要があるが,これらの指導は,患者の年齢,心理状態,受容段階を見極め適切な時期に行う必要がある.
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