2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦争体験がその後の人生に与えた影響~心的外傷の観点から見た学童疎開体験~
Project/Area Number |
19592608
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
出口 禎子 Kitasato University, 看護学部, 教授 (00269507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 麻子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (70216836)
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Keywords | 戦争体験 / 学童疎開 / 集団生活P / TSD / 戦争孤児 |
Research Abstract |
私達はこれまで10年間にわたり学童疎開の体験者を対象に聞き取り調査をしてきた。第二次世界大戦当時、疎開していた学童には「いじめ」や「空腹」「孤独感」などの共通の体験がある。しかしこれらの疎開体験以外に、戦後も長きにわたって彼らの人生に影響を与え続けている多様で深刻な体験があることがわかってきた。例えば、疎開地で大地震が起こり建物の下敷きになった友人の死を目撃し、60年たった今も罪悪感を抱えている人、東京大空襲で家族を失い疎開していた自分だけが生き残って戦争孤児となった人、孤児として生きてきた人生に肯定感を持てないでいる人、集団疎開と縁故疎開を繰り返してきた人など、悲惨な状況の中で生き延びてきた人達は、疎開中だけではなく戦争が終わってからも複合的に外傷体験を重ねていた。 このように心的外傷は重なり合い、人生に大きな影響を与えているものの、彼らはこれらの体験をバネとし、「自分にしか語れない、広告塔等しての役割がある」「今だからこそ語れる経験になっている」と、「語り部」としての役割を見いだし、講演や体験記を出版するなど、新しい人生を創出していた。まさに、新しい出会いと人間関係の中で、「命を肯定する気持ちや生きる気持ち」(ハーマン1992/1997)を取り戻し、自らの体験を意味あるものにしようと努力するサバイバーであった。 このような心的外傷の生存者は、被害者であるにもかかわらず、自分を責め追いつめる特有の罪悪感をもっことが知られているが、罪悪感が特に激烈となるのは、生存者が自分以外の人間の苦しみ、特に死の目撃者となった時であるといわれる。まだまだ体験者の語りから知るべきことは多いように思う。今年度は大空襲の体験者や戦争孤児の語りに焦点を当てながら聞き取りを行い、体験者のライフストーリーを通して戦争が人生に与える影響を考えたい。
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Research Products
(1 results)