2008 Fiscal Year Annual Research Report
婦人科腫瘍の悪性転化におけるRasシグナル経路活性化の意義の解明
Project/Area Number |
19599005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
織田 克利 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 助教 (30359608)
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Keywords | 子宮体癌 / 乳癌 / Ras / PIK3CA / PTEN / 悪性転化 |
Research Abstract |
【目的】PTEN,K-Ras 変異(子宮内膜),HER2 過剰発現(乳腺)は、浸潤癌同様、Early Event として非浸潤性病変においても高頻度に認められる。一方、PIK3CA (PI3Kの触媒サブユニット p110α)変異は、非浸潤癌では極めてまれである。我々は、PTEN,K-Ras変異(子宮体癌)と HER2 過剰発現(乳癌)が、浸潤癌で高頻度に PIK3CA 変異と共存することを報告してきた。今回、PIK3CA 変異が、他の Ras-PI3K 経路の遺伝子発現異常と浸潤癌特異的に共存している意義について解析した。 【方法】ヒト不死化乳腺細胞株に、変異型Ras,変異型 PIK3CA,PTEN shRNA の単独または複数を導入し、PI3K経路活性化の程度を Aktser473 のリン酸化 (p-Akt) を指標に検討した。また、変異型 Ras,変異型 PIK3CA 導入による悪性への形質転換能を、単独/共存の場合で、Soft agar assay 法により比較した。 【成績】変異型 Ras 導入や PTEN の発現抑制単独では、p-Akt の上昇は軽度であったが、変異型 PIK3CA を導入すると、p-Akt は強く誘導され、Akt の基質である GSK3β,Fox01/Fox03a,S6 等のリン酸化も著明に亢進した。変異型 K-Ras,変異型 PIK3CA とも単独では、Soft agar assayでコロニ一を形成しなかったが、両変異共存株では、コロニー形成能が効率的に誘導された. 【意義、重要性】PIK3CA 変異以外の Ras-PI3K 経路の遺伝子発現異常は、非浸潤癌の腫瘍形成(Initiation)に強く関与し、PIK3CA 変異は Late Event として、他の因子との共存により Ras-PI3K 経路をより強く活性化し、効率的に浸潤癌への悪性転化(Progression)を誘導し丁いることが示された。この結果は、PI3K経路を標的とした分子標的治療法への開発に向けた基礎的なデータとして極めて重要である。
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