2010 Fiscal Year Annual Research Report
医学研究におけるヒト資料・利益・補償負担の公正配分に関する実証的ELSI研究
Project/Area Number |
19602001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 健志 富山大学, 臨床倫理センター, 特命准教授 (60431764)
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Keywords | ELSI / 研究倫理 / 社会医学 / 政策研究 / ゲノム |
Research Abstract |
本研究は、ヒト資料(サンプル)をはじめとする研究から生じ得る利益と負担の公正な配分の在り方の今後の方向性について、関連文献に基づく理論研究を行うとともに、サンプルを用いた研究に携わる国内外の研究者を対象とする半構造化インタビューを用いた意識調査を行い、倫理・政策上の国際的合意形成のための基礎資料を得ることを最終的な目標としている。本研究の最終年度にあたる平成22年度には、まず、平成20年度から平成21年度にかけて実施した聞き取り調査の録音内容をもとに逐語録を起こすとともに、その内容について分析を進めた。また、これとあわせて、文献に基づく理論研究も行った。国内で実施した聞き取調査の内容分析からは、例えば、研究のために提供されたサンプルの位置づけとしては、信託されたもの、または、贈与・寄贈されたものとして受け止める意識がとりわけ日本の研究者に強いことなどが明らかとなりつつある。また、理論研究からは、贈与に関する日本の法的構造は、有償・無償を峻別しており、一般的に無償契約である贈与についてはその拘束力を弱く捉えていること、こうした法的・文化的背景がサンプルの所有権等についての国内研究者の意識に影響を及ぼしている可能性などがわかりつつある。一方、バングラデシュにおいて実施した聞き取り調査内容の分析については、英語によるインタビュー・データからの逐語録作成の遅れから、当初予定の通りに進めることができていないため、今後も引き続いて逐語録の作成ならびに内容分析を行っていく予定にしている。
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