2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19602003
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小池 泰 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 准教授 (00309486)
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Keywords | 親子法 / 生殖補助医療 / 遺伝情報 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生殖補助医療で誕生した子の法的地位の検討にある。本年度は、生殖補助医療技術の各類型において、いかなる親子法規定が問題となるかを確定し、当該規定がそもそもいかなる趣旨の規定なのかを、法典調査会の議事速記録および民法修正案理由書を手がかりに調査した。その際、血縁、より正確には遺伝的つながりにどのような意味を与えていたか、という点を特に重視した。大筋は先行研究の成果を追試・確認することになったが、最終年度の研究にあたり注意すべき点も明らかになった。 (1)現行法制度を分析するにあたって重要な点は、血縁(遺伝的連続性)が最終的に判明するか否かに関する理解にある。民法典は、血縁は性的交渉や言動などから間接的にしか判明しないものであり、最終的にわからないこともある、という前提に立って親子法制度を構築していた。それゆえ、現行の親子法制度が血縁を基礎としていても、これをそのまま生殖補助医療の場面に妥当させてよいか否かは別問題である。 (2)現行法が、法的親子関係が存在することそのものを子供の利益とみていたかどうか、という点も重要な問題である。この点は、生殖補助医療のある方法が禁止されたにもかかわらず、それが用いられて子供が誕生した場合に、法的親子関係をおよそ認めないという形で行為の禁止を貫徹すべきか、それとも子の利益の観点から行為の禁止と結果として生じた子の身分を別に考えてよいか、という問題を判断する際に、決定的な意味を持つ。 本年度の研究で得られた以上の知見は、生殖補助医療によって誕生した子の法的地位を検討するための重要な手がかりを与えるものである。
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