2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19602003
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小池 泰 Kyushu University, 法学研究院, 准教授 (00309486)
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Keywords | 親子法 / 生殖補助医療 / 遺伝情報 |
Research Abstract |
本研究では、遺伝情報が法的親子関係の成否にとっていかなる意義を有するか、また、有すべきか、について検討してきた。具体的な課題は、民法の親子法規定の分析による身分帰属の構造の析出と、生殖補助医療によって誕生した子の親子関係をどうすべきか、という問題の解決である。現行法規定の分析によれば、親子関係の基礎付け要素としては血縁と意思が考えられるものの、前者が基礎であるとみるべきである。もちろん、いったん成立した法的親子関係を覆す場合には、意思や子の福祉、身分の安定性など、血縁とは異なる要素が考慮される。 生殖補助医療によって誕生した子の親子関係については、自然生殖を念頭においた現行法規定をそのまま適用できるか、という問題が生じる。夫婦間で双方の配偶子を用いて行われる場合を除いて、生殖補助医療を利用して子を作ろうとする当事者の意図は、血縁を手がかりに親子関係を構築することとは相容れない。第三者の精子や卵子の提供を受ける場合には、まさに血縁と異なる親子関係の成立を望んでいるからである。その限りでは、契約型の養子制度と類似している。そこで、人工生殖子の場合には、遺伝的事実の意義を相対化して、意思に基づく実親子関係の成立を認めるべきことになる。ただし、子の福祉の観点からは、遺伝的事実と異なる法的親子関係を認めるにしても、遺伝的出自を知る機会を子に保障すべきかが問題となる。この点については、自然生殖によって誕生した子と取り扱いを変える必要はなく、少なくとも法的親子関係とは別個に遺伝的出自の認識を法的利益として認める必要はないと考える。もっとも、自然生殖子について遺伝的出自を知る権利を保障すべきか、という問題は流動的状況にあり、今後の展開次第では、身分とは切り離された法益としてこの権利を認める余地は残されている。
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