2007 Fiscal Year Annual Research Report
神経因性疼痛の発症に関与するP2X4遺伝子発現制御メカニズムめ解明
Project/Area Number |
19603005
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
齊藤 秀俊 Kyushu University, 薬学研究院, 助教 (90444794)
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Keywords | 痛み / 神経科学 / 転写調節 |
Research Abstract |
現在、世界には「神経因性疼痛」に苦しむ患者が千数百万人も存在し、救われ難い痛みに苦しんでいる。我々の研究チームは、脊髄のミクログリア細胞に過剰発現するP2X4受容体が神経因性疼痛発症課程における重要な分子であることを提示したが、この過剰発現の詳細なメカニズムは未だ解明されていない。我々はこのメカニズム解明のために、WistarラットP2X4遺伝子の転写調節領域と考えられる5'上流領域配列をクローニングし転写因子結合配列のデータベースを利用してこの配列を解析した。クローニングした配列のプロモーター活性をルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイ系にて検討した結果、P2X4遺伝子上流配列内にレチノイン酸応答配列の存在が示唆された。実際に、ラット初代培養ミクログリアをレチノイン酸で刺激後、P2X4 mRNA発現量を定量的リアルタイムRT-PCR法で比較定量した結果、P2X4mRNA含有量がレチノイン酸の濃度・時間依存的に増加することや、この増加がレチノイン酸受容体の一つであるRXRの阻害薬前処置によって抑制されることを明らかにした。また、ラット初代培養ミクログリアでのレチノイン酸刺激によるP2X4受容体タンパク質発現量の増加を、SDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングにより検出した。これらの結果よりP2X4受容体遺伝子はその5'上流領域配列によってレチノイン酸受容体の標的遺伝子となる潜在的可能性を有しており、このメカニズムが初代培養ミクログリアにおいて有意なP2X4受容体発現増強を引き起こすことを明らかにした。これは神経因性疼痛発症時のP2X4受容体発現制御候補因子としてレチノイン酸とその受容体を介したメカニズムを新たに提唱するものである。
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