2008 Fiscal Year Annual Research Report
モルヒネ投与による脳内Dセリン代謝への影響に関する研究
Project/Area Number |
19603016
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
吉川 正信 Tokai University, 医学部, 講師 (90276791)
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Keywords | Dセリン / セリンラセマーゼ / モルヒネ / 鎮痛 / 耐性 / NMDA受容体 |
Research Abstract |
平成19年度にモルヒネ慢性投与によりラット脳内でDセリン合成酵素のセリンラセマーゼmRNA量並びにタンパク質発現量が増加すること、前脳部(大脳皮質、線状体、海馬)においてDセリン量が増加することをリアルタイムPCR法、Western Blot法およびHPLC法により解析した。本年度はセリンラセマーゼ遺伝子発現を組織レベルで解析し、モルヒネ慢性投与により生じる報酬効果などとDセリン代謝との関連性を明らかにする目的でin situ hybridize法、免役組織化学法、レーザーマイクロダイセキション法などにより解析した。その結果、tail Flick法によりモルヒネの鎮痛に対する耐性を形成したラット脳の神経細胞においてセリンラセマーゼmRNA発現量およびタンパク質発現量が有意に増加した。これまでDセリン合成酵素のセリンラセマーゼはグリア細胞のみに発現されているとされてきたが、脳内においては主に神経細胞で、網膜では神経細胞とアストロサイトで発現していることを明らかにした。また、Dセリンをラット脳室内に投与すると鎮痛効果が現れ、この鎮痛効果はオピオイド受容体拮抗薬のナロキソンおよびベンゾジアゼピン受容体アゴニストのミダゾラムの脳室内投与により拮抗されることをtail Flick法、ホルマリン法により明らかにした。これらの結果は、Dセリンがオピオイド受容体などの連関しつつ鎮痛効果を現す一方で、モルヒネの鎮痛効果に対する耐性形成に影響することを示唆している。
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