Research Abstract |
法整備支援(legal assistance)の手法による国際協力が,国家秩序の構築を介して,平和的な国際社会秩序の形成にどのように寄与しうるか,それによって形成されうる国際社会秩序の内容がどのようなものとなりうるかについて,政府,企業,NGOによる法整備支援プロジェクトの実例を取り上げ,各主体による法整備支援プロジェクトにつき,(1)対象地域・組織,(2)プロジェクトの目標・支援手法・実施体制・人員・予算・期間,(3)支援の成果と問題点等を比較することにより,検討した。その結果,(i)同じく政府開発援助(ODA)の枠組による法整備支援であっても,市場化支援と民主化支援,国益との関連づけ,上流部門と下流部門の重視などに多様性があり,それらが法整備支援の戦略の違いに大きく反映していること,(ii)その背景には,各国の民間企業の利害関係が大きな影響を与えており,自国法にできるだけ近い制度の移植をめぐる競争を誘発している例証が見出された。その一方で,(iii)法の支配の研究・普及・情報交流等を目的とするNGOが顕著に増加し,しばしば国連総会や国連開発計画等の国連機関の活動との密接な連携の下で,法整備支援を通じた法の支配の浸透に積極的に乗り出しており,そうした活動を通じて,より協益的観点からの法整備協力活動が広まりつつあることも事実である。もっとも,これらの国際NGOと各国政府との連携はまだ本格的に推進されてはいない。しかし,国際機関,政府,NGO等による法整備支援は被支援国の国内法形成に直接・間接の影響を与え始めており,国内法の部分的共通化による万民法(law of nations)または世界法(worldlaw)の性格をもつルールの部分的形成の萌芽も見出される。このことは,各国間の法整備協力を通じた国内秩序の形成が,国際秩序づくりの中心手法の1つにもなりうる可能性を示唆している.
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