Research Abstract |
調査研究初年度の平成19年度は,イギリスにおいて政府・自治体によるNPOへの資金提供がどのように変化し,それがNPOの運営にどのような変化をもたらしているかを検証するために,グロスターシャー県における実態把握に努めた。主な成果としては,第1にNPOによるパートナーシップ形成についてである。イングランドでは,各セクターの代表で構成される地域戦略パートナーシップがほぼ全自治体に設置され,自治体の実施計画に当たるコミュニティ戦略計画の策定主体になっている。グロスター県の場合,NPOの中間支援組織がアセンブリーを形成し,サードセクターの意見を代表する役割を果たしており,このことが,パートナーシップにおいてサードセクターとパブリックセクターの対等性を築くための重要な制度的基盤になっていることが確認できた。第2に,政府・自治体のNPOに対する資金のあり方についてである。全国的な傾向と同様,グロスターシャー県においてもNPOへの資金は補助金から委託金に移行しつつあり,この結果,NPOを競争的な関係にしている。事実,NPOは規模の二極化が進みつつある。しかし,補助金は全くなくなる方向にあるわけではなく,小規模なチャリティ団体やコミュニティに対しては,一定の補助金が提供されていた。NPOの特性や規模に応じて,委託と補助金は使い分けられていたのである。また,委託の場合,適切なコスト計算や事業者の選定方法など,NPOのサスティナビリティの観点からNPOのアセンブリーが問題提起しており,委託か補助かという議論以上に,資金提供の枠組みを検討,協議する場の設定とNPO側のネットワーク形成がより重要であることが確認できた。 これらは,日本の自治体における協働政策やNPO向け委託メニューを検討する際にきわめて示唆に富む事例であるとい身る。
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