2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19650078
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
澁木 克栄 Niigata University, 脳研究所, 教授 (40146163)
|
Keywords | フラビン蛋白蛍光 / 経頭蓋イメージング / 体性感覚野 / 神経因性疼痛 / 末梢神経 / 自発発火 / GDNF / 中和抗体 |
Research Abstract |
体性感覚野では末梢神経の一部が損傷されると、対応する体性感覚野脳地図の改変が生じたり、残存する神経の感度が上昇するという可塑性が生じることが知られている。この現象は、皮膚に加わる大きな物理的な外力を回避するための生体防御機構が神経損傷によって破綻したときの代償機構として捉えることができる。この代償的可塑性は神経切断後1時間以内という速さで生ずる。我々は経頭蓋フラビン蛋白蛍光イメージングによって、体性感覚野の神経切断後の代償的可塑性を再現することに成功した。さらにこの実験系を用いて代償的可塑性のトリガーメカニズムを解析した。その結果、神経を切断する代わりに薬理学的に末梢神経における活動電位の伝導を阻害しても代償的可塑性が生ずること、神経を切断しても切断部位の中枢端に0.1ヘルツ程度の電気刺激を加え続けると代償的可塑性が生じないこと、末梢感覚神経の約半数に実際に0.1ヘルツかそれ以下の極低頻度の自発発火が存在することを突き止めた。以上の結果は、末梢神経切断によって極低頻度の自発発火が中枢に伝わらなくなることが代償的可塑性を誘発するトリガー信号として機能していることを示している。われわれはさらに神経栄養因子の一種のGDNFに対する中和抗体を皮下に注射すると、極低頻度の自発発火が阻害されること、神経切断部位の中枢端にGDNFを投与すると代償的可塑性の誘発が阻害されることを見いだした。即ち末梢神経の極低頻度自発発火は、実は内因性のGDNFが末梢神経に作用することによって起きる制御された発火であることが判った。末梢神経切断によって生ずる代償的可塑性は神経損傷によって誘発される神経因性の慢性疼痛の初期過程と密接な関連があり、臨床医学的観点からみて非常に重要である。
|
Research Products
(6 results)