2007 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類新生児が運ばれる時に示すトランスポートレスポンスの神経機構の解析
Project/Area Number |
19650080
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
黒田 公美 The Institute of Physical and Chemical Research, 精神榊疾騒態研究チーム, 研究員 (90391945)
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Keywords | トランスポートレスポンス / 愛着行動 / マウス行動学 |
Research Abstract |
四足哺乳類の多く(猫、ライオン、ネズミなど)は、親が子どもを口にくわえて運ぶ。この時、仔は反射的に手足をちぢめ、体幹を弛緩させた不動の姿勢をとる。これをトランスポートレスポンスTransport response(TR)といい、親が仔を運びやすくするために重要な反応であると考えられる。TRはいろいろな哺乳類で存在が示唆されているが、これまでの研究はラットを用いた行動学的解析にとどまっている。本研究では、将来的にTR反応に必要な脳部位および分子を探索する目的で、マウスTRの個体発生に伴う変化の行動学的解析を行った。まず準備実験として飼育交配中のマウス新生仔を用いて観察した結果、TRは次の3つの要素からなると考えられた。(a)鎮静化(おとなしくなる)、(b)受動的な姿勢適応(体幹の弛緩)、(c)能動的な姿勢適応(四肢を縮める) これらが協調的に出現することにより、母が仔を運びやすくすることに貢献するのであろう。次に近交系C57BL/6マウスの生後9-26日目の仔を用い、ラットでの既報を参考に、実験者が背をつまむことによって出現するTR反応をビデオに撮影した。つままれている間に不動かつ下肢を縮めていた時間を測定した。その結果、マウスTRの発達曲線はラットとほぼ同様であり、生後14日目頃に開眼するまでは100%の仔に見られるが、その後減少して離乳(生後3週)頃には消失した。この週齢以降は親が仔をくわえて運ぶ可能性はほとんどなくなるため、理にかなっていると考えられた。
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