2008 Fiscal Year Annual Research Report
ケラチノサイトから感覚神経に温度情報を伝達する機構の解明
Project/Area Number |
19650083
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
富永 真琴 National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities, 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90260041)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 |
Research Abstract |
新生仔マウスの表皮ケラチノサイトと後根神経節細胞の共培養系を確立し、その共培養の細胞に温度刺激を加えて、細胞内Ca^<2+>濃度の変化を観察した。40度までの温度刺激によって両細胞で細胞内Ca^<2+>濃度増加が観察された。しかし、ケラチノサイトに比べて神経細胞で細胞内Ca^<2+>濃度増加の遅れがみられた。ての遅れは、ケラチノサイトから感覚神経細胞に情報が伝達されるという仮説を支持する結果である。ケラチノサイトからは種々の刺激に応じてATPを放出することが知られている。そこで、ATP受容体阻害剤であるPPADSもしくはsuraminで前処理したところ、感覚神経細胞での細胞内Ca^<2+>濃度増加のみが特異的に阻害された。ての結果から、温度刺激によってケラチノサイトからATPが放出されて感覚神経に発現するATP受容体に作用することが強く示唆された。温度刺激によるケラチノサイトからのATP放出をより直接的に検出する目的で、HEK293細胞にイオンチャネル型ATP受容体P2X2をバイオセンサーとして強制発現させて、ケラチノサイトと共培養した。ケラチノサイトに温度刺激を加えるとP2X2活性化によると考えられる特徴的な内向き整流性を有する膜電流の活性化が観察された。野生型マウス、TRPV3欠損マウス、TRPV4欠損マウスのケラチノナイトを調整して実験を行ったところ、TRPV3欠損マウスのケラチノサイトを用いたときに、温度刺激後のバイオセンサーでの検出ATPが有意に少ないことが判明した。イオンチャネル型ATP受容体P2X2での検討からケラチノサイトからは温度刺激によって局所的に約10μMのATPが放出されているものと推定された。皮膚-神経標本での観察から、温度刺激によって感覚神経の発火頻度が増加し、その増加がTRPV4欠損マウスで有意に小さいてとがわかった。これらの結果は、温度刺激によって表皮ケラチノサイトに発現しているTRPV4が活性化して、ケラチノサイトからATPが放出されて温渡情報を皮膚から感覚神経に伝達しているものと考えられた。
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Research Products
(1 results)