Research Abstract |
平成19年度以前の研究成果(準備段階)により,現在多用されている従来型のMRI造影剤であるガドリニウム錯体Gd-DTPAを糖鎖により化学的に修飾してコア部にGd-DTPA外殻部に糖鎖を配置して分子サイズを大きくし,更に分子認識部位を備えることで生体内分子を補足して造影効果を増幅する分子設計思想に基づいたGd-DTPA-DEN-4-Glc誘導体がin vivo評価によりラットの血管および肝細胞がんの鮮明な描出に成功した。そこで,当該萌芽研究では,「研究の目的」において,基本的には,「がんを早期発見する,MRI造影剤の基礎的な研究」と位置づけて,平成19年度は「研究実施計画」に基づいて,このガドリニウム錯体である4糖タイプのGd錯体Gd-DTPA-DEN-4Glc(OH)を,糖およびリンカーに保護基の導入・脱保護過程を要しない新規な合成法を開発した。この新合成方法によって得られたガドリニウム錯体をin vitro及びin vivo評価した。両者の評価方法では,予期した結果とは異なり,2種類の合成法によって得られたGd-DTPAを糖で化学修飾した錯体は同一構造の錯体ではないことが分かった。そこで,平成19年度は,更に,Gd-DTPA-DEN-Glc(OH)の化学修飾を行った(詳細は,特許の関係でここには記載できない)。これらのGd錯体のin vivro及びin vivo評価を行った。その結果,Gd-DTPAのT1緩和率の約5倍程度の優秀な緩和率を持つGd錯体を発見した。また,それらの新規なGd-DTPA錯体により,直径1mm程度の早期の肝細胞がんの描出に成功した。 しかし,これらの新規なGd-DTPA錯体の錯体生成定数やGd-DTPAの約10倍程度の高いMRI造影効果を持つGd錯体の調製及び構造解析には成功しなかった。 Gd-DTPA-DEN-糖が生体内の分子を認識する際のターゲットの分子及びその機構を明らかにするために,Gd-DTPA-DEN-4Glc(OH)あるいは配位子DTPA-DEN-4Glc(OH)と放射性同位元素を用い,血液成分との相互作用を二次元電気泳動および放射性同位元素の検出によって研究を行った。本研究は,残念ながら,平成19年度内には結論を得ることができかかった。
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