2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19650161
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高見 和至 Kobe University, 人間発達環境学研究科, 准教授 (50236353)
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Keywords | 四国霊場八十八ヵ所 / 歩き遍路 / 心理的恩恵 / 修行 |
Research Abstract |
【研究目的】昨年度は修験道の山岳修行においてフィールドワークを行ったが,行事運営の特殊性,調査研究の実行性を考慮する必要性が浮上した.そこで20年度より研究フィールドを四国霊場八十八カ所巡礼(四国遍路)とし,そのなかでも全行程を基本的に徒歩で巡礼している者(歩き遍路)を調査対象者にすることにした.そこで,まず実際に歩き遍路を行った者の日記(手記)を分析することで,歩き遍路の実態理解と心理的影響および要因を考察した. 【方法】インターネットWeb上で公開されている歩き遍路経験者の日記・手記から性別と年齢,また手記内容の心理的影響に関する情報の有無を考慮して7名を選出した.分析方法は,手記から「自然」「歩行」「心理への影響(自己の内省・気づき・人生観)」に言及された文章を抽出し細分化した.それらをテキストマイニングソフトによってキーワードの関連性を機械的に分析するとともに,筆者の質的分析(KJ法)による内容分析を行った. 【結果・考察】歩き遍路が与える心理的影響を理解する脈略は「日々変化する非日常空間の中で,自然体験と人とのふれあいが繰り返されることからくる自己変容の心理的恩恵」と総括できた,「自然体験」の要素には四国の原初的な自然に触発された「自他の生命の実感」「自然との一体感」が中心であった.「人的体験」には「遍路同士」「地元接待」の2つの要素があった.「遍路同士」は同中の遍路同士の交流と出会いや別れに関する内容で「地元接待」は沿道で受けた遍路へのお接待,親切への戸惑いや感謝であり,これらが自分を内省する契機になっている.このプロセスが約1〜2か月の行程期間に多重に経験され,歩き遍路の心理的恩恵を実感していると考えられる.恩恵の内容は,遍路出発以前の自分に気づいて客観視するとともに,その自分を許容するという「自己受容」の傾向が見られた. 【今後の課題】今後は本年度の研究結果をもとに,アンケート調査用紙作成および面接内容の構成を行う.特に四国遍路には自動車や公共交通機関を利用する者も多いので,歩き遍路との比較から「歩行」の必然性を検討したい.
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