Research Abstract |
固有受容性感覚器神経筋促通法(以下,PNF)による高齢者の顎運動機能向上を図るため,研究初年度は,運動効果の測定方法および少人数に応用しての運動効果を検討した。既存の文献から顎運動機能測定方法を検索し,オクルーザルフォースメータによる咬合力測定,5分間の安静時唾液採取による唾液測定を行うこととした。又,リラックス度を確認するために,手掌の精神的発汗量を測定した。 対象は,認知に支障がない在宅の高齢者29名(男性7名,女性22名),平均年齢75.1±6.5である。PNFによる運動介入を約1か月の間隔で2回行い,その前後に発汗量と咬合力,唾液分泌量の測定を試みた。測定結果は最も参加者が多かった1回目の介入結果を用いて運動前後の差を評価し,1回目と2回目の両方に参加した対象者のデータを用いて運動前,および運動後の値を確認した。解析にはT検定ならびにSpearmanの順位相関係数を用いた。 その結果,発汗量)平均値に差はなく,相関係数はr=0.83で強い相関がみられた。咬合力も平均値に差はなく,相関はなかった。1回,2回目のデータを比較は,運動前の発汗量はr=0.65,咬合力はr=0.97,運動後の発汗量はr=0.92,咬合力はr=0.68であった。唾液分泌量は安静時唾液の意図が伝わらず,測定上の問題が多く,解析に使用できるデータが収集できなかった。 発汗量は,運動前後の変化も少なく,本研究の運動効果評価には使用しにくいようである。咬合力も介入回による変動が少なく測定可能であるが,運動前後の個人差が大きかった。対象は高齢者であり,測定時間を含めて約1時間集中力を持続するのは難しい方もみられた。咬合力の前後差は,疲労が原因なのか,測定方法に問題があるのか検討する必要があると思われた。唾液は分泌量ではなく,粘性を測定するなど方法の再考が必要である。
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