2009 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸域環境モニタリングのための生物情報解読手法の開発
Project/Area Number |
19651007
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山口 啓子 Shimane University, 生物資源科学部, 准教授 (80322220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 浩二 島根大学, 汽水域研究センター, 准教授 (60252897)
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Keywords | ヤマトシジミ / サルボウガイ / 成長線 / 有機酸 / 環境変化 / 中海 / 宍道湖 |
Research Abstract |
野外実験として、宍道湖・中海湖心・本庄水域に設置した環境モニタリングポイントで、環境および二枚貝の育成実験を実施した。特に、H21年5月末に中海本庄水域と境水道を隔てる干拓堤防の一部開削が行われ、それに伴う水質底質変化とそこで生息する二枚貝への記録を集中的に調査した。海水の流入とともに、底層塩分が増加し、開削部付近では溶存酸素濃度も上昇した。実験筏に設置したサルボウガイはH2O年度夏期に生残率ゼロとなったが、H21年度は50%以上の生残率を維持した。これにより塩分・水温等条件の急変した環境下で成育したサルボウガイの殻体試料を得ることができた。 ヤマトシジミを利用した環境モニタリングの開発では、宍道湖で採取した成貝(平均殻長約15mm)を、各水域の表層および底層にてケージ飼育し、毎月1回、成長と肥満度の変化を調べた。9月期には主たる生息地である宍道湖よりも中海表層において成長が大きかった。特に肥満度では、同時期に中海表層において著しい上昇が見られた。これにより、水質環境がモニタリングされた地点における軟体部成長条件の異なる殻体試料を得ることができた。 室内実験では、ヤマトシジミをよびで高硫化水素濃度で飼育した場合の殻体構造と、体腔液のpHおよび有機酸濃度の変化を分析した。その結果、ヤマトシジミでは、貧酸素水のみでは1週間近くまでpH8程度に殻内環境を維持し、有機酸濃度も上昇しないが、高硫化水素条件が加わると、2日程度でpHの恒常性が失われ、pHの低下が始まり、有機酸濃度も上昇することがわかった。このことは、高硫化水素条件下で飼育したヤマトシジミの殻体において、殻内表面溶解をともなう、最も明瞭な殻体成長線が形成されたことと整合的であり、殻体成長線の特徴から硫化水素の影響を受けた履歴を判別出来ることが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)