2007 Fiscal Year Annual Research Report
都市域汚濁河川における亜酸化窒素(N2O)の発生機構と発生量の解明
Project/Area Number |
19651010
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
和田 英太郎 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 地球環境フロンティア研究センター, プログラムディレクター (40013578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 励一郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境フロンティア研究センタ, 研究員 (40390710)
高松 信樹 東邦大学, 理学部, 教授 (80171544)
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Keywords | N2O / 分子内同位体分布 / 汚濁小河川 / 硝酸塩 / 酸素。窒素同位体比 / 起源 / 生成経路 / 地下水 |
Research Abstract |
千葉県西印旛沼集水域は地下水や河川水の窒素汚染が明らかになっている地域である.本研究では,この地域の降水・湧水(地下水)・河川水・西印旛沼などの試料を系統的に採取し,NO_3^-およびN_2Oの分子内安定同位体分布,懸濁有機物および堆積有機物の窒素・炭素安定同位体比を用いてのNO_3^-およびN_2O起源と挙動を解析した.以下の事が明らかとなった. 1)湧水のNO_3^-N濃度は高く,調査地点の32%において環境基準値(10mg/L)を超えていた.δ^<15>N(NO_3^-)の値は,鹿島川上流域と高崎川流域では化学肥料や堆肥などを起源とする4‰前後の比較的低い値であった.新川流域では生活排水の影響が示唆される6‰以上の高い値を示した.鹿島川上流域と高崎川流域の湧水中のNO_3^-は畑地などで肥料が硝化(酸化)されたもの,新川流域では生活排水が地中に浸透した有機物の分解生成物であると考えられる. 2)高崎川ではNO_3^-N濃度とδ^<15>N(N_2O)の間に線形関係が見られた.この事はNO_3^-Nの減少が脱窒(還元)と生物への取り込みによるものである事を示している.一般に脱窒によりNO_3^-がN_2になる場合δ^<15>N(N_2O)はδ^<15>N(NO_3^-)より高い値になるが,高崎川においてはδ^<15>N(NO_3^-)>δ^<15>N(N_2O)となった.この原因としては生活排水などの有機物が大量に河川に流入し河川底層の層構造が乱れ,不完全酸化還元状態が混在し脱窒がN_2まで完全に進行せずN_2Oで止まっている事が示唆された。この結果は琵琶湖東岸の内湖「西野湖と流入汚濁小河川蛇砂川下流域」の結果を支持する。汚濁小河川におけるN_2O発生について二つの事例を得る事ができた。次年度は更なる調査と同位体モデルによる解析を行う。
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