Research Abstract |
本研究の目的は「連続時間ランダムウォークにより,土壌汚染修復技術における物質移動の諸現象が正確に記述できるか」を確認するということであり,具体的には,(a)既存の1次元の不均質系物質移動データへの適用可能性を明らかにすること,(b)もし適用できる場合,従来モデルでのパラメータ分布と連続時間ランダムウォークでのパラメータの間の関係について検討し,両者の得失を評価することである。平成19年度の検討の結果,上記目的(a)に関しては,研究代表者の川西の研究室で得られたエアースパージングの実験結果を,研究分担者である羽田野の研究室において解析し,連続時間ランダムウォークで表現することに成功した(水工学論文集第52巻pp.415-420)。また,この間,川西の研究室で,エアースパージングの実験結果をシミュレートする新しいモデルの開発も進んだ。すなわち,仮想上の立方格子に水を満たし,invasion percolationに基づいて空気を流入させ,格子内に気液の分布をつくりだした後,液相内で古典的なランダムウォークを実行し,液相から気相への溶存揮発成分移動速度を計算するモデルを構築した(American Geophysical Union 2007 Fallで発表)。このモデルでも,エアースパージング実験で得られたようなべき乗則tailingが得られた。エアースパージングの実験結果は様々な現象が複雑に影響しあった結果であり,フィッティングで得られた連続時間ランダムウォークのパラメーターの解釈が難しかったが,このinvasion percolationに基づくモデルを利用することにより,物理現象をより抽象化した形で扱えるようになった。以上,目的(a)に関しては,「適用できる」ことが明らかとなった。平成20年度には目的(b)について検討を進めることになる。
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