Research Abstract |
大規模地震災害直後,最も迅速に実行されるべき人命救助や被災住民の緊急援助は,陸上交通網の閉塞により,極めて困難な状態に陥る.このため,船舶の自己完結機能,海上輸送機能,通信機能を活用して患者搬送などを行う災害時緊急医療支援構想が検討されている. 東海地震などの発生が危惧される東海地区には複数の離島が存在するため,災害緊急時における小型船舶を用いた患者搬送は有効な手段である.小型船舶は,小回りが利き高速で移動が可能である反面,陸上の救急車両と異なり,常に揺れ・振動が発生する.小型船舶による患者搬送には,このような環境下でも,正確に生体信号を計測し,必要最低限の治療を可能とする医療支援システムが必要となる.本研究は,小型船舶の利用を想定し,船舶の揺れ・振動によって発生する生体反応や計測系のアーチファクトを識別し,地上の医療機関に生体情報を送信可能とする医療支援システムの実現を目的としている. 本年度は、ECG, HR, RR, NiBP, SpO_2などを計測する小型患者モニタ,患者の表情や疾患部位を撮影するビデオカメラ,船舶の状態を捉える加速度計,およびコンピュータから構成される生体情報計測システムの試作を行った.データ収集実験は,鳥羽商船高等専門学校が所有する実習船「あさま」(総トン数14トン,定員21名)を用いて,伊勢湾内の鳥羽市周辺の海域で実施した. 小型船舶で計測された生体データには,エンジンの振動がSpO_2のプローブに伝わることによるアーチファクトの混入や,船舶の変針や旋回などの操船を原因とする生体データの変動などがあることがわかった.このため,生体データを陸上の医療施設に送信する場合,計測データ中のアーチファクトの除去を行う信号処理機能に加えて,操船や船舶内の状態を反映したデータ処理機能が必要であることがわかった.
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