Research Abstract |
東海地震などの発生が危惧される東海地区には,複数の離島が存在するため,災害緊急時における小型船舶を用いた患者搬送は有効な手段である.小型船舶は,小回りが利き高速での移動が可能である反面,常に揺れ・振動が発生する.このため,生体は常時無意識に船舶の揺れ・振動に対する姿勢制御などの動作を行っている.小型船舶環境で使用する医用機器を開発するためには,船舶の揺れ・振動を原因とする計測系のアーチファクト対策に加えて,船舶の揺れ・振動に対する生体動作による生体信号変動を考慮した生体信号の計測手法の開発が必要となる. 本年度は,各種信号処理アルゴリズム構築を目的に,船舶の揺れ・振動の生体への伝搬の仕組みの解明および生体信号に与える影響調査を中心に研究を進めた. これまでに,船舶の床,人の腰,頭部に装置した3軸の加速度計のデータを同時に収集計測する加速度計測システム,船舶の運航状況をGPSデータから計測する船舶運航データ収集システム,患者モニタによって計測する心電図,呼吸,SpO2の生体信号をコンピュータに取り込む生体信号計測システムを開発した.加速度計測システムは,加速度とコンピュータ間を,Bluetoothを用いて無線化した.また,生体信号計測システムは医用テレメータを用いてシステムを構築した. 小型船舶を用いたデータ計測実験は,鳥羽商船高等専門学校が所有する実習船「あさま」上で行った.計測実験は,システム検証を兼ねて,被験者3名,総計約12時間のデータを収集した.船舶の揺れ・振動の生体内の伝搬解析は,人の腰,頭部に装置した3つの加速度の大きさをベクトル表示するとともに,各加速度の周波数解析を行った.その結果,船舶の揺れに対して被験者の腰や頭が逆方向に動く姿勢制御の様子や,船舶の揺れ・振動で周波数の高い成分が,膝などで吸収されて,腰や頭に伝搬する様子が観察された.
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