2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19651090
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小鹿 一 Nagoya University, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50152492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大場 裕一 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教 (40332704)
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Keywords | ゲンジボタル / カワニナ / 進化 / 化学物質 / 感覚器官 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、ゲンジボタルとカワニナの共進化を化学物質レベルで探ることにある。ゲンジボタルからアルコールに可溶性のある化学物質を抽出し、HPLCで分析した。また、比較のためにホタル科と近縁な甲虫(ジョウカイボン科、ベニボタル科、コメツキムシ科)でも同様の分析を行った(Oba et al., 2008)。その結果、発光に関わるルシフェリンはホタルだけに含まれ、他の甲虫には検出されなかった。このことは、ホタルの進化とルシフェリン等の特定の化学物質の獲得に関係性がある事を示唆する。 実験に用いるゲンジボタル幼虫とカワニナを確保するために、2メートル水槽を用いた実験室内での大量飼育と繁殖の確立を試みた。しかし、ゲンジボタルは1齢幼虫期に大量死が起こった。原因は、おそらくエサとなるカワニナの稚貝の確保が不十分だったためと考えられる。また、カワニナも野外から捕獲したばかりの時はゲンジボタルの匂いに対し敏感に反応したが、飼育するうちに反応性が低下して行くことがわかった。今後は、飼育環境をより自然状態に近いものにする必要がある。 本課題ではゲンジボタル幼虫の嗅覚に重点を当てた研究を行ったが、視覚も重要な要因になっている可能性も考えられた。そこで、ゲンジボタルの視覚を司るオプシン遺伝子についても解析を行った(Oba et al., 2009)。その結果、ゲンジボタルの幼虫は紫外線領域と可視光領域(緑色)に相当する視覚感受性に対応する光受容体を持っている事がわかった。ゲンジボタルによるカワニナの追跡にも嗅覚の他に視覚が使われている可能性がある。
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