2007 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム紅河デルタにおける可変的社会制度の村落間比較研究
Project/Area Number |
19651103
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳澤 雅之 Kyoto University, 地域研究統合情報センター, 准教授 (80314269)
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Keywords | コミュニティ / 紅河デルタ / 農村組織 / 合作社 / ネットワーク / ジャガイモ / 市場経済化 |
Research Abstract |
現地調査の結果、紅河デルタ村落の生業活動において、かつての集団農業の主体であった農業生産合作社が、現在では、その構成員や機能を変えた上で、重要な役割を果たしていることがわかった。具体的には、市場経済化に対応し、現金収入の向上と、現金収入源の多様化を達成するのに大きな役割を果たしていた。そうした新合作社では、資本金を負担することがメンバーシップであり、利益もそのメンバーに対して還元されるように、契約に基づいた近代的な組織運営を行っていた。その一例であるバクニン省のジャガイモ生産・販売組合では、組織の設立者が、個人のコネクションを最大限活用し、地方政府(県や省レベル)の役人と共同して販路の開拓や技術導入を行い、ジャガイモの生産・販売ネットワークを築いていた。 一方、かつての合作社と構成員は変わらないものの、市場経済化に対応するための新たな機能を備え、かつて以上に、村落の生業活動に重要な役割を果たしている新しい組合も見られた。その一例であるナムディン省の組合では、組合幹部の指導の下、村(合作社)の土地を利用してジャガイモの生産・保管・販売事業が行われていた。そこで得られた利益は、組合員だけでなく村(合作社)にも還元されていた。契約に基づいた近代的組合とかつての村落共同体的な組織との中間的な組織形態をなしているといえよう。 上のふたつのケースは、組織の形態や機能は異なるものの、共通点として、地方の人的資源・土地資源を利用していることがあげられる。在来の資源を有効に活用することが事業の開始と継続に重要であることを示しているが、一方で、地方の資源は地方の人びとが優先的に利用するという、(暗黙の)ルールが存在するのであれば、それは、地方を越えた事業展開にとって制限要因になっている可能性もある。この点は、次年度以降の課題として残された。
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Research Products
(5 results)