2008 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム紅河デルタにおける可変的社会制度の村落間比較研究
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19651103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳澤 雅之 Kyoto University, 地域研究統合情報センター, 准教授 (80314269)
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Keywords | 合作社 / 有機野菜 / 郊外型産地 / コミュニティ / ネットワーク |
Research Abstract |
ハノイ市周辺とナムディン省で有機野菜栽培合作や商品用農産物生産合作社を訪問し、現地調査をおこなった。ハノイ市周辺での調査では、かつての集団農業の主体であった農業生産合作社が、現在では、その構成員や機能を変えた上で、重要な役割を果たしていることがわかった。新合作社は、資本金を負担することがメンバーシップであり、利益もそのメンバーに対して還元されるように、契約に基づいた近代的な組織運営を行っていた。しかし、いずれの合作社も参加メンバー数は多くとも十数人であり、かならずしも多くはなかった。メンバー間の協力関係も合作社ごとに異なった。メンバーが共同で、農薬使用のルールを決めたり、販売用の産品の規格を統一しているような合作社がある一方、ほとんど生産は個人にまかされ、合作社を形成しているのは、単に、有機農産物生産者の商標を入手することが目的であるところも見られた。 またナムディン省での調査では、かつての合作社と構成員は変わらないものの、市場経済化に対応するための新たな機能を備え、かつて以上に、村落の生業活動に重要な役割を果たしている新しい組合も見られた。その一例であるナムディン省の組合では、組合幹部の指導の下、村(合作社)の土地を利用してジャガイモの生産・保管・販売事業が行われていた。そこで得られた利益は、組合員だけでなく村(合作社)にも還元されていた。契約に基づいた近代的組合とかつての村落共同体的な組織との中間的な組織形態をなしており、形態的には過去の合作社ではあるが、その機能は現代的に変化していることがわかった。
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