2008 Fiscal Year Annual Research Report
カント晩年の政治哲学の意義と世紀転換期ドイツの政治思想
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19652002
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
平子 友長 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 教授 (50126364)
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Keywords | カント / 永遠平和 / 世界市民社会 / 先占 / ロック / 先住権 / ヴァッテル / 植民地主義 |
Research Abstract |
平成20年度において、萌芽研究の研究目的に関わる以下の研究実績があった。 【論文】「近代自然法思想の再評価-自然法と先住民問題-」名古屋哲学研究会編『哲学と現代』第24号 【研究発表】(1)Marx on Capitalist Civilization.神奈川大学創立80周年記念国際シンポジウム『マルクスの遺産』における報告(2)[近代自然法思想の再評価-自然法と先住権問題-」名古屋哲学研究会2008年度総会シンポジウム「人間的自然について-抵抗の起点としての『自然』」における報告『永遠平和のために』(1795)以降のカントの「世界市民社会」概念は、「無主の地」論に基づいて非西洋諸大陸の占有権を要求する同時代の西洋万民法jus gentium(これを「国際法」と訳すことは誤り)に対する真正面からの批判であること、『永遠平和のために』における「訪問権」の承認は『人倫の形而上学』における「先住民の許可の無い定住権の否定」との関係でのみ意味を有することを文献的に証明する作業を行った。その際、Emer de Vattel, Le Droit des Gens ou Principes de la Loi Naturelle. 1758を検討することによって、『人倫の形而上学』『諸学部の争い』における「世界市民社会」概念が、西洋諸国による植民活動批判のみならず、とりわけ独立後のアメリカ合衆国批判(Native Americansの立場からの)であることを発見した。アメリカ建国の理念をカントの共和制擁護論と結びつけて肯定的に評価する議論(ハーバーマス、アレントなど)は、カント最晩年の政治思想に対する歪曲であることを今年度の研究でさらに解明する。
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